※当ページの転載・複製は,一切お断り致します。 |
地球みたいに自分で光らない星を,惑星と呼びます。惑星は,太陽の周りをまわり,太陽の光を反射して光る天体です。2006年8月に決められた定義では,次のような条件を満たす星が惑星であるとされました。
2006年8月24日以前は,太陽系には地球を含めて9個の惑星が知られ,太陽に近い順に,水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星であるとされていましたが,この定義の出現により,(c)の条件を満たさない冥王星は,惑星から外れ,“小さい惑星”という意味の矮惑星(わいわくせい)という名で定義されることになりました。
それでは,冥王星と8つの惑星について特徴を比べてみましょう。
矮惑星の冥王星を含めた9個の惑星の覚え方は,太陽に近い順から“水 金 地 火 木 土 天 海 冥”(すい きん ち か もく ど てん かい めい)。これなら調子よく覚えられますので,暗記しておきましょう。
太陽系の惑星は大きく二つの種類に分けられていて,太陽に近い4つの惑星(水星・金星・地球・火星)を地球型惑星,その外側にある4つの惑星(木星・土星・天王星・海王星)を木星型惑星と呼んでいます。冥王星は,もちろん,このどちらにも属していません。冥王星の外側には,冥王星に似た天体が多数存在していますが,この中で,冥王星よりも大きな 2003UB313 という天体は,冥王星と同じ矮惑星の仲間です。
さて,地球型惑星と木星型惑星には,どんな違いがあるのでしょう? 簡単な特徴を,表にしてみました。
地球型惑星(岩石型惑星) | 小さい | 岩石でできている | 自転が長い | 環がない | 衛星は0個〜2個 |
木星型惑星(ガス型惑星) | 大きい | 気体でできている | 自転が短い | 環がある | 多数の衛星がある |
同じ太陽系の惑星でも,随分と違った特徴がありますね。
早速ですが,次の表を見てみましょう。
地球型惑星と木星型惑星の大きさや自転周期の違いなどがよくわかります。数字をよく見てみると,その他にも,金星の自転周期と公転周期がほぼ同じであることや,金星の大きさが地球とほぼ同じであること,火星の1日と地球の1日はほぼ同じ長さであることなどがわかってきます。
名前 | 直径(km) 地球を1とすると | 太陽からの距離(km) 太陽・地球間を1とすると | 自転周期 (地球時間) | 公転周期 (地球時間) | 極大光度 | 衛星の数 |
水星 | 4,878 km 0.38 | 57,910,000 km 0.387 | 58.65日 | 87.97日 | -2.4等 | 0 |
金星 | 12,104 km 0.95 | 108,200,000 km 0.723 | 243.0日 | 224.7日 | -4.7等 | 0 |
地球 | 12,756 km 1.00 | 149,600,000 km 1 | 23.93時間 | 365.26日 | 1 | |
火星 | 6,787 km 0.53 | 227,940,000 km 1.524 | 1.026日 | 686.98日 | -3.0等 | 2 |
木星 | 142,800 km 11.19 | 778,330,000 km 5.203 | 9.8時間 | 11.86年 | -2.8等 | 16 (*) |
土星 | 120,660 km 9.46 | 1,429,400,000 km 9.539 | 10.2時間 | 29.46年 | -0.5等 | 18(*) |
天王星 | 51,118 km 4.01 | 2,870,990,000 km 19.18 | 17.9時間 | 84年 | 5.3等 | 15(*) |
海王星 | 49,528 km 3.88 | 4,504,000,000 km 30.06 | 19.1時間 | 164.8年 | 7.8等 | 8(*) |
冥王星 | 2,320 km 0.18 | 5,913,520,000 km 39.53 | 6.4日 | 248.5年 | 13.6等 | 1 |
* 2005年11月30日現在に見つかっている木星の衛星は62個,土星は47個,天王星は27個,海王星は13個。木星型惑星の衛星の数は今後も増えていくことが予想されます。 |
表の“最大光度”の欄を見て下さい。惑星の中でも,肉眼で見えるのは水星から土星までの5つです。この5つの惑星は昔からよく知られ,曜日の名前にもなりました。また,これらの惑星が星座の中を動いていく様子は,占星術を通して人間の暮らしに深くかかわってきた歴史を持っています。
それに比べて天王星・海王星・冥王星は,ずっと最近になって発見されました。天王星はかろうじて肉眼で見えますが,通常これらの惑星は,双眼鏡や望遠鏡などの道具を使わなければ見えません。
星座を作る星達は,毎年決まった時刻に決まった場所へ現れます。星座早見盤を使えば,いつどこにどんな星座が見えるかわかることは,最初に勉強しましたね。
ところが惑星が見える位置や時間は,星座早見盤で知ることはできません。惑星は,太陽を周りながら常に星座の中を移動しているのです。“惑星”という名前も,惑星達が他の星と違って人を惑わすような動きをすることからできた名前です。これに対して星座を作っている星は,恒に並びを変えずに光っているので恒星(こうせい)と呼ばれます。
では,惑星はどんな時に見えるのでしょうか?
惑星の見え方は,太陽と惑星と地球の3つの位置関係によって決まります。例えば,惑星が地球から見て太陽の向こう側にあるときは,明るい太陽の光に埋もれて見ることができません。また,反対に地球から見て太陽と反対側の方角にあるときは,一晩中見ることが出来ます。このように,太陽と惑星と地球の位置関係は,惑星が見える時間や位置を決める大切な役割を持っているのです。
これらの位置関係にはそれぞれ名前がついていて,惑星が太陽の向こう側にあることを合(ごう)といい,惑星が地球を挟んで太陽の反対側に来る時を衝(しょう)いいます。衝の時は,惑星は一晩中見えると共に地球に一番近づき明るくため,絶好の観察時期となります。
地球より太陽に近い水星や金星は,衝の位置に来ません。太陽から離れる最大離角(さいだいりかく)の頃をねらいましょう。太陽の東側に離れる東方最大離角は夕方の西の空,西側に離れる西方最大離角は,明け方の東の空で観察好機です(太陽と惑星と地球の位置関係についての詳しい話)。
肉眼で見える惑星を探して,星座に対する動きを観察してみましょう。動き方は惑星によって様々です。
例えば約88日間で太陽を一回りする水星は,早足であっという間に動いていきます。水星は英語で“Mercury”(マーキュリー)と呼びますが,これはローマ神話に出てくる伝令の神様の名前です。その忙しそうに動く姿は,いかにも羽の生えた靴で飛び回っている伝令の神様の姿を連想させますね。
それに対して,太陽から遠く離れたところをゆっくり回っている木星や土星は,星座の中をゆったりと少しずつ移動します。木星は英語で“Jupiter”(ジュピーター)と呼び,こちらはローマ神話で天を納める神々の王の名前。ゆったり堂々とした様子が,神々の王を思わせたのでしょう。
それでは,各惑星について,簡単に観察ポイントを紹介しましょう。
水星は太陽に近いため,最大離角の時でも太陽からあまり離れず,なかなか見ることはできません。地動説を唱えた有名な科学者コペルニクスが,生涯水星を見られなかった話は有名です。最大離角の頃の低い空を探しましょう。肉眼でも十分見える明るさですが,太陽が沈んで間もない明るい空を探す時は,双眼鏡があると便利です。
金星の英語名は,ローマ神話に出てくる愛と美の女神の名前をとって“Venus”(ヴィーナス)といいます。金星は太陽と月を除く全ての天体の中で最も明るく,その群を抜いて輝く美しい姿は,いつの空でも一番星。水星と違って誰でもすぐに見つけることができます。もし望遠鏡で覗く機会があったら,月のように満ち欠けしていく様子を確認しましょう。
火星と木星と土星は,基本的に衝の前後が観測好機。地球に近いため明るく見えますし,日没と共に東の空から昇ってきて一晩中見えています。望遠鏡で見るときも,近くて明るいため模様が見えやすいでしょう。衝を過ぎてしばらくすると,夜の早い時間帯に見えるようになってきます。
土星や木星は,もともと距離が遠い上に大きな天体なので比較的安定して見えていますが,火星には少しばかり注意して下さい。
火星は,衝に向かってどんどん明るくなっていくのがわかりますし,衝を過ぎると暗くなっていくのもわかります。また,同じ衝でも明るく見えたり暗く見えたり,随分と様子が違っています。火星の軌道が楕円形を描いているため,衝の時の地球との距離が少しずつ違っているためです。そんなわけで,距離によって大接近・中接近・小接近と呼び分けています。最近では,2003年8月の大接近が,テレビや新聞でもとりあげられて大きな話題になりました。
惑星が見つかったら,どの恒星の近くに光っているか記録して,数日たってから比べてみましょう。特に,近くに他の惑星があると毎日の位置変化がよくわかるので,ぜひ観察して下さい。
今年の惑星現象などについては星空情報にまとめてありますので,観察時間の参考にして下さい。
さぁ,今夜はどんな惑星が輝いているでしょう?