ハレー彗星からの便りを

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(熊本県民天文台 『星屑』No.115,116 1984年1,2月号掲載)

 1984年1月7日24時すぎ,ハレー彗星がいっかくじゅう座付近の10等星を掩蔽し,それが日本でも見られるというわけで,熊本県民天文台でも観測が行われた。掩蔽される10等星を直焦で固定撮影し,その写真から食の長さを求め,さらにハレー彗星の直径を算出しようというのである。
 …そう書くと如何にももっともらしく聞こえるが,実は私はそんな難しそうな計算のことはサッパリわからないし,黒点と流星以外の天体は観測などしたこともなかった。だが,一年半ぶりに天文台を訪れてみようとJ氏の車に便乗したところ,この観測現場に居合わせることになったのだ。熊本を去ること二年,そろそろ幽霊会員も板についた私が報告などを書いている所以である。

 さて,7日21時、天文台に着くと,そこにいたのは私とは初対面のN君ひとり。人が集まらない(特に,H氏が来ない)とJ氏とN君が困っていたが,私は果たして何人観測に必要なものか見当もつかない有様。その後,31cmでの観測準備が行われていたが,私は別所で星野写真の撮影をしていたため,このあたりの報告はカット。

 ハレー彗星の食の時間は刻々と近づく。皆忙しそうである。空気が心なしか緊迫している。23時50分,55分…突然単車のエンジンの音が近づいてきた。何とか食に間に合って,H氏の到着である。
 24時。準備の邪魔になっては,と,外をうろついていた私も第二観測室に入る。24時03分。いよいよ掩蔽開始。ラジオがせわしく時を告げる。私は30秒おきにシャッターを切った。食は3分で終わる。あっという間だった。

 ハレー彗星は23等級,掩蔽される星は10等級。よって,食は10等星が減光する,あるいは消える,という形で観測されることになる。J氏によると,眼視では食はわからなかったとのこと。写真観測は31cmとMT100で行われたが,その結果は…残念ながら掩蔽は無かったとのこと。

 こうしてあわただしく観測は終わった。
 遠い彼方からハレー彗星は私たちに存在を知らせようとしてくれたわけだが,果たしてその便りは如何に? どこかで無事に受け取られたであろうか。

1984年1月


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