冬の三姉妹

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冬の星座の星図

 こいぬのβ星に“ゴメイザ” −泣き濡れた瞳− という名がつけられているのを,私はよく不思議に思っていた。だから,このアラビアの三人姉妹の伝説を知った時には本当に嬉しかった。

 アル・アビュール(シリウス)とアル・ゴメイザ(プロキオン)とスハイル(カノープス)は三人姉妹だった。スハイルはオリオン座のリゲルと結婚したが,まもなくリゲルを殺して南の空へ逃げてしまう。アル・アビュールはスハイルを追って天の川を越えて南の空に行ってしまったけれど,アル・ゴメイザは,天の川を渡れない。取り残された彼女は,スハイルとアル・アビュールを思っていつも泣いていた。それで,アル・ゴメイザ(泣き濡れた瞳)と呼ばれていた。この名前が,19世紀になって,とある天文学者の間違いによりプロキオンからβ星へと移り,今に至ったものらしい。
 天の川を越えてスハイルを追ったシリウスには,アル・アビュール(渡った)という名がついている。

 これは,冬の銀河を挟んだ三つの1等星の印象を見事に表した,素晴らしい伝説だと思う。
 夫を殺して逃亡したスハイルには気性の激しさと自我の強さ,それを追って河を渡ったアル・アビュールには勇敢さ,そして二人の姉妹を思って泣くアル・ゴメイザには優しさを見る。魅力的な三姉妹。

 ただ,最後に不思議に思うのは…,何故に殺された筈のリゲルが,ああもギラギラ光っているのだろうか? それに,リゲルも天の川を渡っているではないか!


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