太巻き寿司の丸かぶり

雪だるまのアイコン1999-02-03 Tues.

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(C) 1999 Yuki Snowy. (Produced by Mira House.)


お寿司の写真

 節分といえば,「鬼は外 福は家」と言って豆をまき,年の数だけ拾って食べる。
 古来風習などに重きを置かない家庭で育った私には,世の中ではそういったことをやるらしい程度の印象しかなかった。

 そんな私が,節分に太巻き寿司を食べる習慣があると知ったのは,つい2,3年前のこと。
 会社で「今日はお寿司を食べる日でしょう」と話している人がいて,私以外の誰もが「お寿司を食べる日」を理解しているらしいことを知って驚いたのがきっかけだった。

 聞いてみると,節分の日,家族みんなでその年の恵方を向いて太巻き寿司を丸かぶりをする行事が,京都の一般家庭ではごく普通に行われているらしい。京都在住十年目にして初めて知る習慣に,私は目を丸くした。
 初めて聞く私には,なかなか不思議でユニークな習慣だ。丸かぶりをしている間は口を利かずに一気に食べなくてはならないらしく,また太巻き寿司と一緒にイワシが食卓にのぼる家庭も多いらしい。太巻き寿司を一気に食べるときは,よく喉をつまらせ大変なのだが,みんな何とか食べるとのこと。一部には,一口食べたら話をしてもよいというローカルルールも存在する。

 太巻き寿司の風習は,豊臣秀吉の家臣だった堀尾茂助吉晴が,節分の日に巻き寿司(のようなもの?)を食べて出陣し,その戦いに大勝利を納めた話に由来するらしく,また,イワシの方は,“ドラキュラにニンニク”みたいに,鬼が嫌う匂いのイワシで,厄払いをするためのようである。

 寿司の丸かぶりは,どうも京都から生まれた風習らしいが,愛知県の方だという説もあり,マスコミで取り上げられたりしたこともあって最近各地で見られるようになり,確かなことはわからない。“豊臣秀吉の…”などと言う割には,そんなに古い習慣でもないらしい。
 だが,とにもかくにも京都では,今この習慣は健在なのだ。今まで一人暮らしでこんな習慣を楽しむこともなかったが,今年から,我が家でもにわか京都人になって節分の太巻き寿司にあやかろう。ただし喉をつまらせないように。

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 2006年追記:
 その後爆発的に全国へ広まったこの行事,今や,売り上げ140億円,土用の鰻,バレンタインのチョコなみの行事に発展したそうな。あぁ,たくましきかな,商売根性!
 でも,これだけメジャーになるってことは,結局こういう縁起物が好きなのね,日本人って。


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