色鮮やかなサクラソウは,春の使者。
そこに一鉢あるだけで,とたんに周囲は明るくなります。学名のプリムラも“最初の”という意味のラテン語“プリマ”が語源で,春に最初に咲く花という意味がこめられています。
サクラソウは,北半球の温帯〜寒帯に約600種分布する多年草で,各国で園芸種として親しまれてきました。日本でも江戸時代の中頃から栽培が始まり,様々な可憐な品種が現代に伝えられています。
西洋では,サクラソウは悲しみや死のシンボルとして描かれますが,これは,ギリシア神話で,サクラソウは婚約者を失った青年パラリソスが悲しみにやつれ死んで変身した姿とされているからです。
イギリスでは弔花や棺を飾る花として用いられますが,春先に咲いて薄幸や儚さを思い起こさせることから,青春を象徴する花にもなっています。若さにまかせた享楽的生活を“primrose path”(サクラソウの道)と呼ぶのもこのためです。
また,ドイツにはサクラソウを“鍵の花”とする伝説が残っています。
病床の母を慰めるために花を摘むリスベスという少女の前へ花の精が現れ,サクラソウの花束を渡し,花を城門の鍵穴に差して鍵を開け,自分を訪ねてくるようにと話します。城へやって来た少女に花の精は宝物を与えたということです。
この伝説に基づいて,スウェーデンではサクラソウを“五月の鍵”と呼び,イギリスでは鍵を管理する聖ペテロにちなんで“ペテロの草”と呼んだりもします。
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