キュウリ
(胡瓜,cucumber,Cucumis sativus L.)

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白いぼ胡瓜の画像

 新鮮なキュウリが安値で店先に並ぶようになりました。
 本格的な夏が近づく六月は,昔から疫病祓いのみそぎの季節。初物キュウリを祇園の神に供え川に流す行事は,日本各地に広く見られる風習です。

 キュウリはウリ科のつる性一年草で,代表的な夏野菜。低温に弱い作物ですが,品種改良と施設栽培で年中手に入るようになりました。
 原産地はインドのヒマラヤ南山麓。10世紀以前に日本へ伝わり,奈良時代には食用にされていましたが,普及したのは明治以降です。

 漢字の〈胡瓜〉は中国の古語で,中国の西域〈胡〉から伝わった瓜という意味。〈こうり〉と読んだものが訛り,〈きゅうり〉になったと言われます。
 名前の由来には,熟すと黄色くなることから〈黄瓜〉,臭気があることから〈臭(き)瓜〉などの説もあります。

 日本の胡瓜は,東南アジアから中国へ入った華南型(黒いぼ系)品種と,シルクロードを通って中国へ入った華北型(白いぼ系)から育成されたもので,最近の品種は,果皮の緑が鮮やかで果肉の歯切れがよい華北型が90%以上を占めています。また,ピクルス用には短いシベリア系品種が用いられます。
 僅かなビタミンAとCが含まれるだけのキュウリに栄養的価値は少ないものの,独特の旨みは漬け物や酢の物に好まれてきました。

 キュウリには多くの禁忌・俗信がありますが,汚れが多い作物として,京都の祇園社(八坂神社)では社地にキュウリを入れることを忌む風習がありました。地方によって旧暦6月15日の祇園祭の日はキュウリを食べない,この日を過ぎると食べない,この日までは食べないなどの習慣も知られ,素戔嗚尊(すさのおのみこと)がキュウリの刺で目を突いたのでキュウリは栽培しないというところもあったそうです。
 一方,ウリ科は古来から水神と縁が深い植物とされ,キュウリは水神や河童が好む食物とも言われてきました。


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