こと座の和名

※転載・複製は,一切お断り致します。
(c) 1999 Yukiko Tsuchiyama. All rights reserved.
(Produced by Mira House.)


α星の和名

棚機,七夕 (たなばた)
織姫 (おりひめ)
織り子星 (おりこぼし)
七夕伝説は中国の民話で,遣唐使により伝えられたものと考えられ,棚機,織姫の名は全国的に知られる。
中国名だった織女(しょくじょ)をたなばたつめと読み,“棚機津女”という字があてられた。棚機津女とは,もともと日本の神話に出てくる,機を織りながら神を待つ聖なる乙女のことで,これと混同されていったらしい。
“七夕”の字が“たなばた”と読まれるようになったのは,醍醐の時代から。
“織り子星”は,広島の呉地方で見つかった名前。



ヴェガとアルタイル

こと座α(ヴェガ)とわし座α(アルタイル)を組みにして呼んだ和名

女夫星 (みょうとぼし)
二つ星 (ふたつぼし)
全国的に見られる名前。
二つを合わせて“たなばた”と呼び,性別・昇る順序・方角などで呼び方を区別すると,次のような名前になる。
女棚・男棚 (めんたな・おんたな)
女棚機・男棚機 (めんたなばた・おんたなばた)
女の棚機・男の棚機 (めったのたなばた・おったのたなばた)
先棚・後棚 (さきたな・あとたな)
西棚機・東棚機 (にしたなばた・ひがしたなばた)
下棚機・上棚機 (しもたなばた・かみたなばた)
沖の棚機・灘の棚機 (おきのたなばた・なだのたなばた)
めんたな(ばた)”“おんたな(ばた)”は,香川・岡山・山口などで,“めったの”“おったの”は富山。
さきたな”“あとたな”は四国の伊予地方であるが,日本海側の敦賀や舞鶴では“あとたな”を棚機星の後天の川の中で目につくデネブ(はくちょう座α)の呼び名とすることもある。
ひがしたなばた”“にしたなばた”は福井県敦賀地方,“しもたなばた”“かみたなばた”は新潟県佐渡地方,“おきのたなばた”“なだのたなばた”は京都府綾部地方。
天の川 (あまのかわ)
天の川星 (あめんくらぶし)
“あまのかわ”は千葉県,“あめんくらぶし”は奄美大島。天の川の両岸に輝くことから。



棚機の子ども

こと座α(ヴェガ)とε星・ζ星を組みにして呼んだ和名

棚機 (たなばた)
棚機の子ども (たなばたのこども)
ε星とζ星を合わせて棚機と呼ぶ地方も多いが,ε星とζ星を棚機(織り姫)の子どもと見る地方も多い。
中国では,初めε星とζ星を織女の曲げた足と見て“跂(つまだ)てる織女”と呼んでいる記録があるが,後には織女の二人の子と見ている記録が残っている。



ζ星・δ星・β星・γ星で作られる平行四辺形を呼んだ和名

瓜畑 (うりばたけ) 瓜畑
瀬戸内地方での名前。
七夕の夜には夫婦星(織り姫と彦星)が瓜畑に下りてデートするので,立ち聞きしてはならないという。
これらの星を,夫婦星が逢瀬を楽しむ瓜畑と見た。
瓜切り爼 (うりきりまないた)
爼星 (まないたぼし)
菜切り星 (なきりぼし)
“瓜切り爼”は瀬戸内地方,“爼星”“菜切り星”は島根県。
七夕の夜は,織り姫が心づくしの料理を作る。その時使う爼だという。
棚機の麻小笥 (たなばたのおこげ)
熊本県隈府(わいふ)町での名前。
麻小笥は紡いだ麻を入れる桶のことだが,この場合は七夕の供え物を入れる竹籠のことを言った。

【参考】
 ●『星の方言集 日本の星』 野尻抱影著 中央公論社 (1973)
 ●『日本星名辞典』 野尻抱影著 株式会社東京堂出版 (1973)
 ●『星座ガイドブック 秋冬編』 藤井旭著 誠文堂新光社 (1975)




Home    星のるつぼ星のるつぼ