vsolj-news 150: recurrent nova RS Oph

                        VSOLJ ニュース (150)

            反復新星へびつかい座RSの21年ぶりの増光を、
              愛媛の成見さん、群馬の金井さんが検出

                                         著者  :山岡均(九大理)
                                         連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp

  新星は、近くを回り合う連星の一方が白色矮星であるときに、もうひとつの
星から白色矮星表面にガスが降り積もって、それが核爆発を起こしたものです。
したがって、新星というのは本質的に繰り返す現象なのですが、繰り返し周期
は天体によって違い、長いものだと数万年以上しないと再び爆発しないと考え
られています。一方、頻繁なものでは10年ほどの間隔で増光を繰り返すことも
あり、2回以上明るくなったところが観測された新星は「反復新星」(再発新星、
再帰新星などとも言う)と呼ばれます。反復新星は、これまでに10例弱しか知
られていない、かなり貴重な天体です。

  反復新星のうち、肉眼で見えるほど明るくなるものは、かんむり座Tとへび
つかい座RSの2つしかありません。このたび、へびつかい座RSが、21年ぶりと
なる増光を迎えました。

  増光を世界に先駆けて捉えたのは、愛媛県の成見博秋(なるみひろあき)さん
と、群馬県の金井清高(かないきよたか)さんです。12日朝(日本時)にはまだ11
等ほどだったこの天体が、13日の朝、12.83日世界時には、4.5等という、肉眼
でも見える明るさになっていたのです。

  これまでに報告されている明るさの推移は以下の通りです。

  2006年2月     明るさ  観測者
(日, 世界時)    (等)

     9.826      10.5    成見
    11.862      11.0    金井
    12.829       4.5    成見
    12.847       4.6    金井
    12.854       4.5    金井
    12.862       4.4    金井
    12.868       4.4    金井
    12.875       4.4    金井
    13.163       4.8    W. Renz (ドイツ)
    13.181       4.8    W. Renz
    13.214       4.8    W. Renz
    13.235       4.8    W. Renz

です。観測者の間で値に系統的な差がある可能性が高いので、へびつかい座RS
が今増光中なのか、それとも減光中なのかはまだ確言できませんが、過去の噌
光時の光度変化からすると、現在がもっとも明るい時期で、これから急速に暗
くなっていく(0.1等/日くらい)ものと思われます。明け方の見えにくい位置に
ありますが、ここ数日は肉眼でも捉えられるほどの明るさで推移するので、こ
のチャンスを逃さないよう観測すると面白いでしょう。

  なお、成見さんはベテランの変光星観測者で、第1回日本天文学会天文功労
賞を「変光星の目視測光25万点」の功績で受賞されています。また、やはり反
復新星であるさそり座Uの増光(1979年)を捉えたこともあります。金井さんは、
やはりベテランの天体観測者で、1970年には大道-藤川彗星(C/1970 B1
(Daido-Fujikawa))の世界最初の発見者として、日本天文学会天体発見賞を受
賞されています。両氏の長年の観測とその成果には頭が下がるばかりです。

参考文献: CBET 399 (2006 Feb. 13)
           vsolj-obs 19994の記事(広沢 憲治氏)

                                                        2006年2月13日

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