Subject: vsolj-news 207: SN 2008ij in NGC 6643

                        VSOLJ ニュース (207)

                    NGC 6643に今年2個目の超新星

                                         著者  :島田雅史・山岡均(九大理)
                                         連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp

 ひとつの銀河で超新星が出現する割合は50〜100年に1個程度と考えられてい
ますが、必ずしも同じペースで出現するわけではなく、銀河の種類などによっ
て異なります。ほんの数年の間に複数の超新星が出現することもあれば、私た
ちの銀河系のように何百年も観測されないこともあるのです。

 山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんは、12月19.45日(世界時、以下同
様)に60cm反射望遠鏡を用いて撮影したCCD画像上で、15.9等の明るさで写って
いる新天体に気付きました。新天体の位置は、

    赤経: 18時19分51.91秒
    赤緯:+74度33分55.0秒 (2000年分点)

で、りゅう座の渦巻銀河NGC 6643の中心核から東に23秒角、南に11秒角ほどの
ところです。この天体は、翌20.347日にも板垣さんによって確認され、15.7等
とやや明るくなっていました。埼玉県上尾市の門田健一(かとだけんいち)さん、
ロシアのカザン州立大学のグループも天体を確認しています。一方、板垣さん
自身が12月16日に撮影した画像には、19等よりも明るい天体は写っていなかっ
たことから爆発直後の発見だと考えられます。 

 NGC 6643は今年3月に重力崩壊型の超新星2008boが観測されたばかりの銀河
で、1年も経たないうちに今回の超新星2008ijが出現したことになります。今
年は、IC 2522銀河に超新星2008brと超新星2008coが、また昨年末と年頭にな
りますがNGC 2770銀河に超新星2007uyと超新星2008Dが観測されています。今
回の超新星2008ijはどのような超新星なのか、今後の分光タイプ決定や電波・
X線などによる観測、そして光度変化の追跡が待たれます。

参考文献:CBET 1626 (2008 Dec. 20)

                                                        2008年12月21日

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