Subject: vsolj-news 249: SN 2010he in NGC 1120 VSOLJ ニュース (249) 母銀河から離れたところに超新星 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp 超新星は星が死ぬときの大爆発ですから、星が多く存在する、銀河の腕や中 心部で発生することがほとんどです。しかし、星がそれほど多くない銀河辺縁 部でも、超新星が起きることがあります。今回、山形市の板垣公一(いたがき こういち)さんが発見された天体は、まさにその一例です。 板垣さんは、8月20.696日(世界時、以下同様)に撮影した画像で、17.6等の 新しい天体に気付きました。翌21.777日に確認したときにも明るさは変わって いませんでした。天体の位置は、 赤経 2時49分10.81秒 赤緯 -14度26分59.8秒 (2000年分点) で、くじら座とエリダヌス座の境界付近(エリダヌス座側)にあるレンズ状銀河 NGC 1120の中心から、東に97秒角、北に65秒角離れた位置にあたります。天体 は、宮城県大崎市の遊佐徹(ゆさとおる)さんによって確認されました。 新天体がNGC 1120に属しているものだとすると、銀河中心からの距離は 67kpc以上になります。私たちの銀河系では、小マゼラン銀河よりも遠くの距 離にあたります。写真に写っている銀河の広がりより、かなり遠いところです。 そのためか、最初の広報では、この天体は「超新星らしい天体」として報じら れました。一方、新天体がこの銀河に属するものと考えると、発見時の絶対等 級は-17.7等ほどになります。星生成が不活発なレンズ状銀河、しかもその辺 縁部での出現ですから、寿命の短い大質量星起源の重力崩壊型超新星であると は考えにくく、核爆発型超新星の可能性が高いと思われますが、その極大にし てはやや暗いところです。ただし、星生成が不活発なところで出現した核爆発 型超新星は、活発なところで発生したものに比べて暗いという研究もあり、そ れとは話が合います。 8月29.13日になって、イタリアのグループが新天体の分光観測を行ない、天 体がこの銀河の距離にある核爆発型(Ia型)超新星であることが判明しました。 これを受けて、天体は「超新星2010he」と呼ばれることになりました。このよ うに、天体の発見とその公表・命名には、細心の注意と労力が払われているの です。 板垣さんの発見画像 http://www.k-itagaki.jp/images/psn-1120.jpg 遊佐さんの確認画像 http://space.geocities.jp/yusastar/PSNinN1120_100821.htm 参考文献:CBET 2421 (2010 Aug. 22) CBET 2430 (2010 Aug. 29) 2010年8月31日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利で す。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。