vsolj-news 281: BW Scl in outburst

VSOLJニュース(281)
ちょうこくしつ座で新矮新星が増光

                              著者:大島誠人(京大理)
               連絡先:ohshima@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 秋の夜空といえばカシオペア座やペルセウス座をはじめとした北の空の華やか
さが目に付く一方で、南の空は明るい星もほとんどなく目立たない印象がありま
す。どこが何座か、改めて訊かれて戸惑ってしまったことのある方も多いのでは
ないでしょうか。それもそのはず、この方角は銀河の極の方向。星がたくさんあ
る銀河の円盤面から離れた方向にあたるのです。われわれの銀河の南極はこの目
立たないエリアにある星座の一つ、ちょうこくしつ座の方向にあります。
 そんな影の薄い感のあるちょうこくしつ座ですが、このたび新たな矮新星が発
見されました。この天体の興味を引く点は、非常に明るいこと、そして実はすで
に変光星として知られていた天体であるということです。
 この天体はHamburg/ESOサーベイというサーベイによって発見された16等台半
ばの天体です。のちにROSAT衛星によってX線の検出がなされたことや、測光観測
やスペクトル観測によって判明した特徴などから、激変星の一つであろうと考え
られるようになりました。極小時における光度変化の観測から軌道周期が78.2分
と見積もられたため、もしこの星が矮新星増光を起こせばおおぐま座SU型矮新
星、あるいはそのサブグループであるや座WZ型矮新星となるであろう、と考えら
れていました。その後ちょうこくしつ座BWという変光星としての名前が付けられ
ましたが、その後特に目立った増光は報告されていませんでした。
 2011年10月21.3146日にハワイのM. Linnoltさんによってこの天体が9.6等まで
増光していることがAAVSO-DISCUSSIONメーリングリストに報告されました。極小
時の光度が16等台半ばであることを考えると増光範囲は7等程度と、WZ Sge型が
疑われる値です。その後P. Starrさんによって行われた連続測光観測のデータに
よると、アーリースーパーハンプ様の弱いダブルピーク状の変動が見られます。
アーリースーパーハンプはWZ Sge型矮新星の初期に特徴的な変動であることか
ら、このことからもやはりWZ Sge型矮新星が疑われます。9.6等という極大光度
(今後さらに明るくなる可能性もあります)は矮新星の中でももっとも明るい部
類に属するものです。
 この天体の詳しい位置は、以下のとおりです。

赤経 23時53分00.7秒
赤緯 -38度51分45秒 (2000.0年分点)

 この位置からも分かるとおり南に非常に低く、南中時でも高度20度程度にしか
なりません。冒頭でも述べたように回りにあまり明るい星のないエリアでもある
ことから観測はやや難しいかもしれませんが、南中時刻が宵過ぎと季節的には非
常に観測しやすいことと光度が明るいことから導入できれば小望遠鏡でもその姿
をとらえることは可能かと思います。
 このように、極小がすでに変光星として同定されている天体から矮新星となる
ケースというのは非常に珍しいものです。増光を信じて日々のモニター観測を続
けた観測者の努力が実った結果といえるでしょう。

参考文献
Abbott, T. M. C. 他 "The ROSAT cataclysmic variable RX J2353.0-3852."
A&A, 318, 34, 1997
Augusteijn, T & Wisotzki, L. "HE 2350-3908: a dwarf nova with a 78m
orbital period." A&A Letter, 324, 57, 1997
AAVSO MyNewsFlash Report
vsnet-alert 13782 (AAVSO-DISCUSSIONの転送記事)


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