Subject: vsolj-news 285: Nova Sagittarii 2012

                        VSOLJニュース (285)
                        いて座に新星が出現

                                         著者:前原裕之(京都大学花山天文台)
                                       連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp

 4月下旬になると夜半過ぎには私たちの銀河系の中心方向に見えるさそり座やいて
座などの星座が東の空に姿を現すようになります。そのいて座の中、銀河系の中心方
向から北におよそ6度の位置に新星が発見されました。
 ロシアのKa-Dar天文台のS. Korotkiyさんと、モスクワ大学のK. Sokolovskyさんは、
焦点距離135mmのレンズとCCDカメラを用いて4月21.011日(世界時, 以下同様)に撮影し
た画像から、9.6等の新天体を発見しました。この天体は発見者らの4月17.99日に撮影
した画像には14等以下、オーストラリアのN. J. Brownさんが19.73日に撮影した画像
には12等以下でそれぞれ写っていませんでしたが、中国のR. J. Gaoさんが20.84日に
撮影した画像には10.2等で写っており、このおよそ1日の間に増光を始めたと考えられ
ます。この天体はオーストラリアのJ. Seachさんや茨城県の清田さんを始め、多数の
観測者によって確認観測が行なわれました。西山さんと椛島さんのチームの観測によ
ると、この新星の位置は

赤経: 17時 45分 28.05秒
赤緯:-23度 05分 23.2 秒  (2000.0年分点)

です。
 この天体の分光観測はフランスのC. Builさんや、岡山理科大学の今村さん、岡山県
の藤井さんによってそれぞれ行なわれ、幅の広いバルマー輝線(Hα線輝線のFWHMはお
よそ秒速5,000km)がみられたことから、古典新星であることが判明しました。
 この新星は4月22日には9等ほどの明るさで観測されましたが、筆者の行なった23日
の観測ではV等級で10.6等、24日には11.2等と早くも極大から2等ほど暗くなっていま
した。分光観測では、新星爆発によって膨張するガスの速度が速いこと、Hα輝線の形
状が複数のピークを持つことといった、速い減光を示す反復新星(例えばさそり座U)の
新星爆発時のスペクトルに似た特徴を示すことが報告されており、今後の新星の明るさ
やスペクトルの変化が楽しみな天体と言えるでしょう。

参考文献
CBET 3089 (2012 April 24)

・新星の画像
 清田さん撮影
 http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PNV_J17452791-2305213-120422.jpg

・新星のスペクトル
 C. Builさんの観測
 http://www.astrosurf.com/buil/nova_sgr2012/obs.htm

 岡山理科大学(今村さん)の観測
 http://blog-imgs-44-origin.fc2.com/t/n/b/tnblab/pnv_Sgr_20120423.png

 藤井さんの観測
 http://otobs.org/FBO/etc/pnv_sgr_20120422.gif
                                                           2012年4月25日

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