Subject: vsolj-news 308: SN 2014J in M 82 VSOLJニュース (308) M 82に明るい超新星2014Jが出現 著者:山岡 均(九大理) 連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp おおぐま座のM 82は、爆発銀河という別名でも有名な、星形成がたいへん活 発な銀河です。M 82では、これまで大質量星が重力崩壊したタイプの超新星が いくつか検出されています(超新星2004amなど)が、このたび発見された超新星 は、白色矮星の核爆発によるもので、重力崩壊によるものよりもかなり明るく なります。 今回の超新星は、University London Observatory(イギリス)のS.J. Fosseyさんが、学生たちと35cmシュミットカセグレン望遠鏡で1月21.80日(世 界時、以下同様)に撮影した画像で見つけたものです。超新星の位置は、 赤経 9時55分42.14秒 赤緯 +69度40分26.0秒 (2000.0年分点) で、銀河の中心から西に54秒、南に21秒の位置にあたります。 発見報を聞いて、山形市の板垣公一さんは、自身が50cm反射望遠鏡で撮影し た画像を調べたところ、14.559日には17.0等よりも明るい天体は見られなかっ たいっぽう、15.571日には14.4等で見えており、毎日どんどん明るくなってい たことがわかりました。また、15.378日にはすでに明るかったという報告もあ ります。爆発してから1週間ちょっとの天体のようです。23日現在の明るさは 11等ほどです。 広島大学かなた望遠鏡や、岡山県井原市の美星天文台を含め、世界各地の天 文台で分光観測が行なわれ、この超新星は白色矮星が爆発したIa型と判明しま した。幅の狭いNa D吸収線が深く、多色測光でもB-Vが1以上の赤っぽい色をし ていることから、星間吸収によってかなり減光しているもようです。赤外線に 感度がある機材では明るく写るでしょうが、観測値をきちんと相互比較するに は、測光用フィルターを用いた観測が必要です。もちろん、眼視やフィルター なしの撮影でも、明るさを見積もることはできますから、自分の機材で可能な 方法でご覧になるといいでしょう。 極大は1月末から2月頭くらいになると予想されますので、口径があまり大きく ない望遠鏡でも、今後しばらく明るさの変化を追うことができそうです。これ まで超新星を観測したことがない人には、大きなチャンスです。これからの光 度変化が楽しみです。 参考文献 CBET 3792 (2014 Jan. 23) ATEL 5786, 5789 板垣さんの発見前画像 http://www.k-itagaki.jp/psn-m82.jpg 爆発前のHST画像(ATEL 5786) http://www.astro.caltech.edu/~spt/PSNJ09554214p6940260.png 2014年1月23日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公 開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出 典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。 -- 九州大学大学院理学研究院物理学部門 山岡 均 〒812-8581 福岡市東区箱崎6-10-1 yamaoka_@_phys.kyushu-u.ac.jp アドレスは@を半角にし、前後の_を消してください