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冥王星は,1930年トンボーによって発見され,以降9番目の惑星として親しまれてきた。だが,その軌道があまりにも楕円形で,しかも他の惑星の軌道面から17度も傾いていること,木星型惑星にも地球型惑星にも分類できない氷の天体であること,また,木星や土星のいくつかの衛星より直径が小さいことなど,いくつもの理由で惑星として分類すべきかどうか議論されてきた。
その議論に拍車をかけたのが,1992年以降の“カイバーベルト天体”と呼ばれる冥王星に似た氷の天体の発見だった。これらは冥王星軌道の外側に70個ほど発見され,中には冥王星とよく似た軌道を持つものもあり,冥王星は,大きさこそ少しばかり大きいが,カイバーベルト天体として分類するのが妥当であると思わたのだ。そこで,冥王星をカイバーベルト天体第1号として位置づけてはどうかという提案が持ち上がった。
一方これに対して,小惑星研究者の中からは,冥王星を小惑星リストに載せて,近々発生する記念番号10000番を与えてはどうかという提案。小惑星リスト上で切りのいい番号には,記念に固有名称が与えられることになっているのだ。
しかし,どちらにしても直径約 2300km の冥王星は,それらの天体に分類するにはあまりに大きすぎる。専門家の間でも意見の一致が見られないうちに,一般の人々の間では,慣れ親しんだ“9番目の惑星”が無くなってしまうのかとの動揺が起こった。
これを受けて,1999年2月3日国際天文学連盟(IAU)は,冥王星をカイバーベルト天体のリストに加えるなどの学問的提案はなされているが,これは冥王星の分類を変える話ではないという見解を発表し,事は一件落着。学問上はともかくとして,当分,冥王星は9番目の惑星と呼び続けられることとなったのだった。
しかし結局,冥王星が惑星の地位から転落する日がやってきた。
2006年8月24日,プラハで開催されたIAU総会にて太陽系の惑星が定義され,冥王星は,dwarf planet(準惑星)に分類されたのだ。
これを受け,2006年9月には,冥王星に小惑星番号134340 が割り当てられた。こうして76年間続いた冥王星の惑星としての称号は覆され,今に至っている。