二匹の犬

※当ページの転載・複製は,一切お断り致します。
(c) 1999,2004,2006 Snowy Yuki. All rights reserved.


 洋の東西を通じて必ず対にして見られている星が幾つかあり,それを私はとても面白く思う。全く異質な文化を持ちながら,同じ目で星を見ていた。そこに,素朴に星と親しんだ古の人々の心が忍ばれる。
 そんな星のひと組に,おおいぬとこいぬ,二匹の犬のα星がある。

おおいぬ座とこいぬ座の写真

 プロキオン。その名も“犬のさきがけ”。おおいぬ座αシリウスより,十数分早く昇って来る。おおいぬの先駆でありながら,同じ犬の星座,こいぬ座のα星。
 ところがこの2星,天球上での動きから日本でも対の名を持っている。

 全天一の明るさを誇るシリウスには“大星”という和名があるが,これに対し,プロキオンは“小さい大星”。小さいのに大星だなんて矛盾した名だと思うが,それでも大星の名を与えなければならないほど,プロキオンはシリウスと対だったのだろう。
 また別の地方では,プロキオンを“色白”,シリウスを“南の色白”と呼んだ。
 (小さな大星に色白,プロキオンって随分と優しい呼ばれ方をしてきた星だと思う。)

 プロキオンとシリウスを結ぶ不思議な縁は,さらに続く。
 地球からの距離が,シリウスは8.7光年,プロキオンは11光年。日本本土から見える1等星としては,シリウスは一番近く,プロキオンはそれに続いて2番目で,加えて両者とも白色矮星の伴星を伴っている。

 確かにそれは,ただ偶然が重なっただけのこと…。
 でも,それだけでは済まされない縁がこの2星を繋いでいるようで,人の世の不思議な縁を重ね見ながら,私は寒空の中を仲良く進む2星の動きを追いかける。

(photo by Ham)

Home   星空余滴   星愁