サクサイワマンの太陽の祭り

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 インカ帝国の都クスコの東で街を見下ろすサクサイワマンの遺跡は,巨大な3層の石が22回のジグザグを繰り返しながら積み上がる要塞だ。1日3万人によって80年かけて作られたという説もある。ピューマの形をしたクスコの街の頭の位置にあり,宗教的なものか軍事的なものか,用途はよくわかっていないという。

 ここが遺跡となったのは,1536年5月。2万の兵を連れてサクサイワマンに陣取ったマンコ・インカは,スペインの夜襲に破れ,城壁も円塔も大部分が破壊された。夜は戦わないというインカ兵の習慣が,スペイン側につけ込まれたのだった。インカの滅亡と共に,やがてインカの神もカトリックに追放された。
 しかし今でも,6月24日の太陽の祭り(インティライミ:Inti Raimi)の日だけは,インカの儀式と伴に太陽神が復活することになっている。インカ王の子孫は伝統的な衣装をまとってサクサイワマンに降り立ち,傍らの神官に,太陽の神への生け贄である2頭のリャマを屠るよう命じる。インカ帝国の子孫たちは,ペルー各地でこの日を祝って舞踏を行う。

 1994年11月4日。私がサクサイワマンを訪れた日は,朝から霧雨が降ったり止んだりを繰り返していた。“聖なる泉”タンボマチャイの近くの“赤い要塞”プカプカラの遺跡は,雨に阻まれ遠くから見ただけ。サクサイワマンに着いた時も,空はどんより暗かった。
 しかし,この遺跡で自分の誕生日にインカの太陽の祭りが行われることを知った私が感動していると,突然雲が切れ始め,辺りが太陽の光に照らされた。まるで太陽の祭りの日に生まれた私がこの地を訪れたことを,太陽が祝福してくれているかのようだった。
 それ以来,毎年6月24日が巡ってくると,私はサクサイワマンの陽光を思い出しつつ年をとる。

ジグザグが繰り返される石組み。
ジグザグに組まれた石組み
破壊された石組みを陽光が照らし始める。
石組み
青空にそびえる石の壁。
石の壁
サクサイワマンから望むクスコ。クスコはケチュア語で“ヘソ”。
クスコ

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