イースター・エッグ(Easter egg)

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イエスは言われた。
「わたしは復活であり,命である。わたしを信じる者は,死んでも生きる。」
(ヨハネ11:25『聖書』新共同訳/日本聖書協会)


 キリスト教の教会暦の中でも最大の祭日であるイースター(復活祭)は,カトリックやプロテスタントでは,春分後の満月の後の最初の日曜日(3月22日〜4月25日)に,ロシア正教会などの東方正教会では当初のしきたりに従ってユリウス暦により定めて祝います。

 イースターの起源は,古代ゲルマン人の一派チュートン人により行われていた春の祭で,イースターという英語名も,チュートン語の春の女神の名エオストレ(Eastre)に由来するといわれています。エオストレは元々夜明けの女神だったことから,“東の”(eastern)という言葉が連想されますね。
 チュートン人はエオストレの祝日である春分の日に春の祭を行っていましたが,これが次第にユダヤ教の過ぎ越しの祭と融合し,更には過ぎ越しの祭の最中に起こったイエス・キリストの死と復活にまで繋がっていったのです。

イースター・エッグの画像

 イースターには歴史と共に様々な風習が生まれてきましたが,中でも知られているのが豊穣を示すイースターのウサギ,そして命の印である色卵,イースター・エッグでしょう。

 多産なウサギはエオストレのシンボルでもありましたが,イースターへの登場はかなり後世になってからだったようです。卵は,もともと明るく色を塗って太陽の象徴として用いられていたもので,イースターには,当初,キリストの血を意味する赤い色の卵として用いられました。今ではウサギと色卵がセットになって,イースターの卵はイースターのウサギ(イギリスでは野ウサギ:hare,アメリカでは家ウサギ:rabbit又はbunny)が運んでくるとされ,イースターの朝,ウサギが庭に隠したゆで卵を子どもたちが探し回るゲームにもなっています。

 イースターエッグは,色を塗ったゆで卵であったり,卵の形をした装飾品であったりしますが,卵の模様や作り方,そして用い方は国によってそれぞれです。
 特に豪華なイースターエッグとして有名なのは,ロシアのロマノフ王朝時代,宮廷宝石職人によって作られたインペリアル・イースターエッグ,1885年〜1916年に作られた56個の卵たちです。ロマノフ朝崩壊によりインペリアル・イースターエッグは世界各地へ散らばってしまいましたが,モスクワのクレムリン博物館武器庫へ行くと,今もゴージャスな卵が並んでいる姿を見ることができます。
 ロシアではイースターに卵形の物を贈り合う伝統があったため,今もイースターエッグの制作が盛んで,主要なお土産品の一つにもなっています。

 色とりどりのイースターエッグ。
 その鮮やかな美しさは,日に日に明るさを増す春の日差しの中で,まるで生命の輝きを映しだして歌っているようです。


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