2007年6月23日,午後の早い時間帯。
「熊本西瓜」と書かれた大きなダンボール箱が届いた。しかし,中身は熊本の西瓜ではなさそうで,配達の運送会社の人が言う。
「こちら,差し出しは関西か四国ですか? 午前中の配達で受けてしまっているんですが,この地域からは午後到着の便しかないんですよ。お待ちになっていたら申し訳なかったと思って。」
見てみると,差し出しは瀬戸市の友人。
「あぁ,愛知県です。わかりました。ありがとうございました。」
西瓜のダンボール箱を開けると,音楽CDに封筒,絵はがき,薄い小さな包み…そして,まだ何か,かなりしっかり保護された大きな物が入っているようだ。不用意に取り出さない方がいいような気がして,先に添えられた手紙を読んでみた。
「Fuku Lodge」?
広がっていたのは,いつか行ったことのあるような,どこかで経験したような,自分の過去の一コマを,それもとびきり楽しかった夜から切り取ってきたかような,懐かしい風景。かつて仲間達と過ごした星空の下での幾多の夜が,そこにあった。
沢山の鏡筒,アイピースの箱,カメラ。筒を覗く子がいれば,望遠鏡を前にお喋りしている子もいる。この,手すりにもたれて一人で空を見上げている子は,きっと,私だ…。
瞬時に沢山のことを理解した。
長い間友人の部屋にあったこの Fuku Lodgeが,今日,私の元へ届けられたということ。
彼女が星空の下で過ごした時間,私が過ごした時間。
横についたスイッチを下ろすと,ロッジに灯が灯り,同時にAMラジオの電源が入った。
そう,一人で星を見るときは,よくラジオを聞いたものだった。ほのかなロッジの灯は,帰れる場所だけが放てる安らぎの光。
これを作った方(のサイン?)は,もう他界されたということだが,彼は,そういう星空観望の時間をよくよく知る人だったのだろう。
たぶん,これから毎日,私はこれを眺めながら,私が私になるために過ごした沢山の時間を思い出す。
そして,星空を介して知り合った多くの友人たちに支えられて,いま生きているということを。
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