vsolj-news 018: SN 1999cl in NGC 4501 = Messier 88 VSOLJニュース (018) メシエ88に出現した超新星1999cl 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp 明るい星雲や星団を集めたメシエカタログには、銀河が40個ほど含まれてい ます。これらの銀河は私たちの近傍にあるものが多く、メシエ天体に超新星が 出現するとかなり明るくなることが期待されますが、超新星は1つの銀河当た り100年に1--2個程度しか現われないため、それほど頻繁なことではありませ ん。 リック天文台の自動撮像望遠鏡による超新星捜索チームは、5月29日に渦巻 銀河メシエ88に超新星を発見しました。1999clと名付けられたこの超新星は、 赤経12h31m56s.01、赤緯+14o25'35".3 (2000年分点)、母銀河の中心からおよ そ北へ25秒、西に45秒の位置にあります。これは銀河の内側の腕の中にあたり ます。発見時に16.4等だったこの超新星は、6月7日には14等前後で輝いており、 まだ増光中である可能性も高いものです。 スペクトル観測の結果、超新星1999clはIa型と呼ばれる、超新星の中でも明 るい部類のものであることが判明しています。メシエ88は、私たちから最も近 くにある銀河団であるおとめ座銀河団の一員で、この銀河団に出現した過去の Ia型超新星は極大12等前後になると期待されますが、今回の1999clは、星間物 質によって強い吸収を受けているため、それほどは明るくならないと思われま す。しかし、吸収量の見積もりと現在の明るさから考えると、この超新星は通 常のIa型超新星よりも明るいことも考えられ、注目が必要です。 メシエ天体に出現した超新星は、昨年5月9日にメシエ96に発見された1998bu 以来となります。今後の詳細な観測が期待されます。 1999年6月8日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。