vsolj-news 020: Nova Aql 1999 VSOLJニュース (020) わし座新星1999の発見 (Nova Aql 1999) 著者 :加藤太一(京大理) 連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp 近接連星系中の白色矮星に降り積もったガスが爆発的に核融合反応を起こし、星 の表面を吹き飛ばす現象を「新星」または爆発現象を指して「新星爆発」と呼びま す。なお、新星は新しい星の誕生ではなく、近接連星の進化の後期に起きる現象で す。先日のVSOLJニュース(17)でほ座の3等級の新星の発見をお伝えしましたが (この新星はその後V382 Velと命名されました。最大光度は2.5等に達し、7月14日 現在7.5等程度まで暗くなっています)、今年は新星の当たり年らしく(?)、銀河系 内の新星として本年3番目(反復新星のU Sco爆発を数えると4番目)の新星が発見 されました。この数はすでに最近の年間発見平均数を超えています。 発見は、岡山県の多胡昭彦さんにより55mmカメラで1999年 7月13日にわし座を撮 影したフィルムからなされました。 7月14日、久万高原天文台の中村氏によるCCD 撮像により存在が確認され、美星天文台の綾仁・川端氏による分光観測で新星に特 有の膨張運動を示す輝線が確認されました。分光観測による膨張速度は3400km/sと 大きく、この新星が速い新星(早く減光する新星)であることを示唆します。 精測位置は 19h07m36.90s +12o31'26.2" (A. Nakamura) 19 07 36.91 +12 31 26.7 (N. James) が報告されています。USNOカタログでは、確実な爆発前の星は記録されていない 模様です。 IAUC, VSNETにこれまでに報告された光度観測は以下の通りです。発見から1日を 経過して、すでにかなり急速に減光していることを示しています。 世界時 7月 13.558日 88p (A. Tago, 発見) 14.892 9.94V (J. F. Andujar) 14.923 101 (T. Kinnunen) 14.926 9.29C (D. Buczynski) 14.948 100 (T. Kinnunen) 14.964 97 (R. Pickard) 14.973 107 (R. J. Bouma) VSNETに以下のページを用意しています。世界中から報告される光度変化の様子を Java言語を用いてリアルタイムにグラフで見ることができます。 http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Novae/naql99.html 1999年7月15日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。