VSOLJニュース (025) 久しぶりに日本で単独発見された超新星1999eu 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp 1991年から1997年にかけては、1993年を除く毎年、日本人による超新星発見 が報じられてきました。これらはすべてアマチュアによるものです。特に、 1996年には8件、1997年には7件の発見があり、日本は超新星捜索に大きく貢献 してきています。しかし、どうしたことか昨年は発見がありませんでした。今 年に入って、2月13日に串田麗樹氏によって超新星が発見されましたが、これ はそれより2日前に英国のアマチュアであるArbour氏によって発見されていた もので、独立発見ではありますが、世界最初の発見ではありませんでした。 今日(正確には昨日の深夜)配信されたIAUC 7304に、富山県の青木昌勝氏が、 ろ座の大きな棒渦巻銀河NGC 1097に超新星1999euを発見したと報じられました。 日本での超新星の世界最初の発見は、1997年12月23日の、やはり青木氏による 超新星1997ei以来となります。 発見は11月5日で、そのときの超新星の明るさは17.3等級、位置は赤経2時46 分20.79秒、赤緯-30度19分06.1秒(2000年分点)、銀河の中心から南に157秒、 東に23秒ほど離れた位置になります。この銀河はかなり大きなもので、超新星 の位置は南の渦巻の腕に重なっています。母銀河の3.5分北西には、小さな楕 円銀河NGC 1097Aがあります。この2者はおそらく影響を及ぼしあっており、そ のためにNGC 1097では星の誕生頻度が高くなっていると思われます。こういっ た銀河では、超新星も多く出現すると考えられます。 母銀河の距離は、おとめ座銀河団と同程度(20Mpcほど)と推定され、かなり 近い部類に入ります。この銀河には過去にもII型超新星1995Gが出現しました が、これは吸収を受けた上で15等と明るく観測されています。 11月8日には、アメリカのグループによってスペクトルが撮影され、この超 新星は特異なII型であると報告されています。彼らによると、スペクトルのよ うすは、光度が暗かったII型超新星1997Dに似ているとのことです。今回の超 新星1999euが同じ種類のものとすると、今後それほど明るくはならないと思わ れます。このような暗いII型超新星は、最近1999A、1999br、1999bwなどいく つか観測されていますが、まだその性質は完全には明らかになっているとは言 えません。今回のように距離の近い例で、光度変化などの観測を行なうことで、 このような天体の正体に迫ることができると期待されます。 [参考情報] スペクトル画像: http://oir-www.harvard.edu/cfa/oir/Research/supernova/spectra/snngc1097.jpg 比較星など: [vsnet-alert 3683] NGC 1097 BVRI sequence http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/vsnet-alert/msg03683.html [vsnet-alert 3688] SN 1999eu in NGC 1097 http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/vsnet-alert/msg03688.html [vsnet-alert 3689] Re: NGC 1097 BVRI sequence http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/vsnet-alert/msg03689.html [vsnet-chart 217] Chart of SN1999eu http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/vsnet-chart/msg00217.html [vsnet-chat 2407] Host galaxy of SN1999eu http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/vsnet-chat/msg02407.html 1999年11月10日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。