vsolj-news 051: HadV82 = WR104 VSOLJ ニュース (051) 長谷田さん、「うずまき星」が特異変光星であることを発見 著者 :加藤太一(京大理) 連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp いて座のM8やM20は天体写真でおなじみの星雲ですが、この星雲のそばに WR104 という極めて特異な天体があります。WR というのは Wolf-Rayet star (ウォルフ・ライエ星)のカタログ番号です。ウォルフ・ライエ星というのは 非常に重く明るい星で、星が進化の末期にさしかかり、星の外層の水素が飛ばさ れてしまって、星の内部が露出しかけているような天体です。これらの天体はそ う遠くない将来に超新星爆発を起こすと考えられています。このようなウォルフ・ ライエ星は銀河系で200個あまりしか知られてませんが、その中でもこの WR104 という天体は他に類例をみないような、非常に奇妙な天体です。ハワイの口径10m のKeck望遠鏡で撮られた画像から、2つの星が回りながら、まるで回転花火のよう にうずまき状にガスを放出している姿が捉えられたのです(Tuthillほか(1999)、 Nature 398, 487)。1999年4月、このニュースは国内でも報道され、ご記憶の方も あるかも知れません。たとえば、以下のページで実際に撮られた画像をみることが できます。 http://www.isi.ssl.berkeley.edu/wr104.html たて座新星2000=たて座V463を発見された(VSOLJニュース37,38参照)長谷田 勝美さんは、新星・変光星などの捜索中に長谷田さんの82番めとなる新変光星 HadV82 を発見し、日本変光星観測者連盟(VSOLJ)に報告されました。詳しい調査 の結果、この変光星が上記 WR104 と同一であることが明らかになりました。 長谷田さんの測定の結果、この星は11.8等星から14.5等星以下まで、なんと2.7 等級以上の大きな変化を示すことがわかりました。この「うずまき星」がこのよ うな大きな変化を、しかも1か月程度の比較的短い時間で起こすことは全く予想 されていませんでした。長谷田さんのこの発見はこの天体の謎を一層深めるとと もに、うずまきの成因など、まだ解明されていないこの星の正体に迫る重要な発 見になるものと思われ、世界の天文学者の注目を集めています。 天体の位置は以下の通りです 18h 02m 04s.17 (J2000.0) -23o 37' 42".3 渡辺努さんの作られた以下の観測用星図があります。 http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/vsnet-j/jpg00010.jpg 2001年 4月23日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。