vsolj-news 053: brightening of a LMC WR-star VSOLJ ニュース (053) 大マゼラン雲のウォルフ・ライエ星が異常増光中 著者 :加藤太一(京大理) 連絡先:tkato@kusastro.kyoto-u.ac.jp オーストラリアの Michael Mattiazzo から国際変光星ネットワーク(VSNET)への 通報によれば、大マゼラン雲(LMC)の中の、LMC V3804 と呼ばれるウォルフ・ライエ 星が、過去に例をみないほどに明るく輝いているとのことです。ウォルフ・ライエ 星は長谷田さんが特異変光を発見された「うずまき星」(VSOLJニュース051参照) もその仲間ですが、大質量で、星の外側の水素がはぎ飛ばされた段階の星です。 これらの星は遠くない将来に超新星爆発を起こすと期待されています。 LMC V3804 が注目を浴びているのは、その明るさだけではありません。この星は 有名なタランチュラ星雲の中にあり、約4世紀ぶりに肉眼で見えた超新星1987Aが このすぐ近くで爆発しているからです。LMC V3804 が明るくなっているのを見た 観測者からは、新しい超新星の出現とすら思えた、との報告があります。この星 の性質を考えれば、この印象は決して大きく外れたものではありません。 LMC V3804 は現在9.0等ぐらいと報告されています。この光度は大マゼラン雲全 体でもトップクラスの明るさであるのみならず、タランチュラ星雲付近で現在最も 明るい星になっています。日本からは残念ながら見ることはできませんが、南半球 に観測に行かれる方は、ぜひこの光景をご覧になられることをお薦めします。 天体の位置は2000.0年分点で以下の通りです。 05h 38h 42.4s -69o 06' 02" 2001年 4月30日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。