VSOLJ ニュース (070) ろ座銀河団のNGC 1365に明るい超新星2001duが出現 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp オーストラリアの超新星ハンターとして高名なR. Evansさんが、14等という 明るい超新星2001duを眼視で発見されました。CCD観測が全盛の昨今では、眼 視による超新星発見はかなり珍しくなっています。母銀河であるNGC 1365は、 距離がかなり正確に18Mpcほどと求められており、超新星はさらに明るくなる 可能性があります。 この超新星は、8月24.7日(世界時、以下同様)に発見されました。前日に見 た時には、やや空の状態が悪かったが天体は認められなかったとのことです。 他の観測者が23.7日に撮影した画像には超新星が写っていて、15.76日撮影の ものには写っておらず、この天体が爆発後それほど時間が経っていない新鮮な ものであると推察されます。超新星の位置は、 赤経3時33分28.7秒 (2000年分点) 赤緯-36度08分32秒 と報告されています。母銀河である棒渦巻銀河NGC 1365の中心核から真西にお よそ90秒角にあたり、棒状の部分の西端の、H II領域が見られる部分に重なっ ています。この銀河は、見かけの直径が10分角ほどもある大きなもので、私た ちの銀河に属する前景の星もいくつか重なっていますので、超新星と見間違わ ないように注意が必要です。 NGC 1365は、今の時期日本からですと、明け方の南に低い「ろ座」にありま す。周囲にはNGC 1316などの明るい銀河が散らばっており、「ろ座銀河団」を かたちづくっています。この銀河団の銀河は、ハッブル宇宙望遠鏡の主要プロ ジェクトである「セファイド型変光星を使った銀河の距離測定」の対象になっ ていて、NGC 1365も距離がかなり正確に求められています(18Mpc)。おとめ座 銀河団とほぼ同じ距離にあたります。この距離では、典型的なIa型超新星は極 大12.5等ほどになりますし、その他の型の超新星でも14等程度の極大が見込め ます。NGC 1365はこれまでに2つの超新星が発見されており、また同じ「ろ座 銀河団」に属するNGC 1316では、いずれも極大で12.5等ほどになったIa型超新 星1980Nと1981Dが見つかっています。今後SN 2001duは、分光によるタイプ決 定、光度変化の追跡が重要であるとともに、電波・X線を含む多波長観測によっ て、この超新星の性質が調べられていくと期待されます。 参考: ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 1365の観測 http://www.oposite.stsci.edu/pubinfo/PR/96/21.html 2001年 8月27日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。