Subject: vsolj-news 110: Peculiar Variable in Crux VSOLJ ニュース (110) みなみじゅうじ座に特異な天体が出現 著者 :山岡 均 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp みなみじゅうじ座は全天一小さな星座ですが、南天の天の川のただ中に位置 しているため、新星などの銀河系内の突発天体がときおり報告されます。今回 発見された天体は、当初新星かと思われましたが、それ以上に珍しい特異な変 光星である可能性が高まってきました。今後の追観測がたいへん重要です。 この天体は、オーストラリアのタイバー(V. Tabur)さんが、8月20.486日(世 界時、以下同様)に撮影したCCD画像から、10.2等級で発見したものです。タイ バーさんは、今年7月にもへびつかい座の新星を独立に検出している (vsolj-news 107)など、たくさんの新天体を発見されている熱心な観測者です。 天体は、8月18日撮影の画像では11.9等ほどで見えていましたが、それ以前の 画像では全く見られませんでした。天体の位置は、 赤経 12時23分16.2秒 赤緯 -60度22分34秒 (2000年分点) と報告されています。タイバーさんのさらなる観測で、8月21.5日には1等級ほ ど明るくなっていると報告され、さらに南アフリカのモナード(L. A. G. Monard)さんの観測では8月21.71日に9.2等級(フィルターなしCCDでの赤等級) との報告もあります。ASAS-3データ(vsolj-news 103参照)では、8月17日には 12.5等級ほどの明るさだったのですが、13日にはずっと暗かったようです。 この天体のスペクトルが2つの天文台で撮影されています。ひとつのグルー プは、水素の線の存在から、この天体は古典新星であろうと推測しています。 一方、別のグループは、典型的な古典新星に見られる特徴が見られず、この天 体はV4332 SgrやV838 Monのような特異な天体、post-AGB星ではないかと推測 しています。この天体のさらなる観測が望まれます。 2003年 8月22日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJの速報メーリングリスト vsolj-alert にご加入いただくと便利で す。また、これらの天体についての科学的議論のためのメーリングリスト vsolj-sci もご利用いただけます。購読・参加お申し込みは vsolj-adm@ooruri.kusastro.kyoto-u.ac.jp まで。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。