vsolj-news 152: Nova Cygni 2006 = V2362 Cyg VSOLJ ニュース (152) 掛川の西村さん、はくちょう座に新星を発見 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp 銀河系内の新星は、年間数個程度が発見されますが、北半球での新星発見は、 そのほとんどが日本のアマチュア天文家によるものです。今回のはくちょう座 の新星も、熱心な天体捜索者である西村栄男(にしむらひでお)さんによって発 見されました。西村さんは、昨年も新星を3つ発見(うちひとつは独立発見)さ れたたいへん活発な捜索者です。 西村さんは、4月2.807日(世界時、以下同様)に撮影した写真上に、10.5等の新 しい天体を見いだしました。3月28日に氏が撮影した写真では、12.0等より明 るい天体は見当たりません。発見の報告を受けて、イギリスのR. Milesさんが、 4.995日に8.5等(V等級)でこの新星を確認しました。 天体のスペクトルは、ぐんま天文台の衣笠健三(きぬがさけんぞう)さん、西は りま天文台の内藤博之(ないとうひろゆき)さんと尾崎忍夫(おざきしのぶ)さん、 岡山県井原市の藤井貢(ふじいみつぐ)さんによって報告され、天体が極大前後 の新星であることがわかりました。天体は、はくちょう座V2362と命名されま した。 新星が出現した位置近くには、15等ほどの星がありました。この星が爆発前の 新星の姿なのかどうかを知るためには、新星の位置を詳しく調べなければなり ません。筆者が、三重県熊野市の中島和宏(なかじまかずひろ)さん、東京大学 の前原裕之(まえはらひろゆき)さん、そして前出の内藤さんが撮影した画像か ら測定した新星の位置は、 赤経: 21時11分32.346秒 赤緯: +44度48分03.66秒 (2000年分点) でした。測定に使った星表によると、爆発前の星の位置は、これとは5秒角ほ ど違っており、この星が爆発したものではないことが判明しました。さらに、 昔の画像を調べてみたところ、新星の位置近くに、問題の星の光に埋もれてはっ きりとはしませんが、暗い星(18等程度)がありそうなことがわかりました。こ の星が爆発したのだとすると、新星爆発によって10等ほど(1万倍)明るくなっ たことになります。 参考文献: IAUC 8697 (2006 Apr. 5) IAUC 8698 (2006 Apr. 5) 2006年4月7日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利で す。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。