vsolj-news 172: Nova Cygni 2007

                        VSOLJ ニュース (172)

              多胡さん、明るい新星をはくちょう座に発見

                                         著者  :山岡均(九大理)
                                         連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp

  昨年2月のへびつかい座RSの再発(VSOLJニュース 150)、今年2月のさそり座
V1280(VSOLJニュース 167,168)と、肉眼でも見える新星がこのところ話題になっ
ています。今回発見された2007年はくちょう座新星は、発見等級が7.5等と、
やはり比較的明るいもので、今後の変化が楽しみです。

2007年はくちょう座新星を発見されたのは、岡山県津山市にお住いの多胡昭彦
(たごあきひこ)さんです。多胡さんは、昨年のカシオペヤ座のマイクロレンズ
現象(VSOLJニュース 162)を検出されたり、これまでにも数多くの新星を発見
されるなど、精力的に活躍されている天体捜索者です。

多胡さんは、3月15.787日(世界時、以下同様)に撮影したデジタルカメラ画像
に、7.4等級の新しい星を見つけました。翌日の16.75日にも7.5等級で確認さ
れましたが、12.796日の画像では12等より明るい天体はこの位置にはありませ
ん。岡山県井原市の美星スペースガードセンターでもこの天体が確認され、位
置が以下のように測定されました。赤い光に感度の高い、フィルターなしCCD
での観測で、明るさは6.7等とされています

    赤経:  20時28分12.52秒
    赤緯: +41度48分36.5秒  (2000年分点)

  この位置には過去に18.5等級(red等級)ほどの赤く暗い星が観測されており、
もしこの星が増光したのなら、12等ほど、つまり10万倍近くも明るくなったも
のです。

  岡山県井原市の美星天文台、兵庫県佐用群佐用町の西はりま天文台では、
16.8日(日本時間で17日未明)前後にこの天体のスペクトル観測を行ないました。
たいへん赤いスペクトルに、新星特有のP Cyg型を示す水素線が見られたため、
吸収を強く受けた、極大近くの新星と考えられます。膨張速度は1000kmsほど
です。たいへん赤いため、肉眼ではCCDでの撮影に比べてやや暗い等級が報告
されていますが、今後の変化を注目していきたいところです。

参考文献: CBET 890 (2007 Mar. 16)
       CBET 891 (2007 Mar. 17)
    美星天文台撮影のスペクトル  http://www.bao.go.jp/astro/nova/pn_cyg2007.png
    西はりま天文台撮影のスペクトル http://www.nhao.go.jp/~naito/temp/NovaCyg2007/PNCyg.gif

                                                        2007年3月18日

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