vsolj-news 200: Probable Nova in Aql VSOLJ ニュース (200) わし座にたいへん暗い新星 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp わし座に、14等級の新星らしき天体が発見されました。天体と私たちとの間 にある星間物質によって光が吸収されたために、たいへん暗く見えているもの と推定されます。私たちの銀河系内の新星で、これほど暗い状態で発見された のはたいへん異例です。 天体を発見したのは、数々の超新星を発見してきたことで広く知られている、 山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんです。最近では、より広い視野を捜 索することで、矮新星という種類の変光星の発見や、ジャコビニ彗星の再発見 なども成し遂げています。板垣さんは、9月22.554日(世界時、以下同様)に 21cm望遠鏡で撮影した広視野の画像で新しい天体に気付きました。約44分後の 22.585日に、60cm望遠鏡を使って撮影した画像から測定した天体の位置は、 赤経 19時06分28.58秒 赤緯 +7度06分44.3秒 (2000年分点) でした。天体の明るさは、フィルターなしのCCD画像では14.0等ほどでした。 以前の可視光領域で撮影された画像では、この位置には天体は見当たりません が、近赤外線波長での天体カタログ2MASSには、たいへん暗い天体があり、こ れが増光したものと思われます。 茨城県つくば市の清田誠一郎(きよたせいいちろう)さんや、三重県の中島和 宏(なかじまかずひろ)さんが、24日にフィルターを用いてこの天体を撮影した ところ、赤色の波長(Rc)では16等ほどでかろうじて検出、赤外域(Ic)ではかな り明るかった一方、黄色の波長(V)などでは天体は見えませんでした。また、 カナダのグループや岡山県井原市の美星天文台による分光観測でも、赤い波長 より短い波長の光はほとんど見られず、長波長側でのみ光が検出されています。 これは、星間物質による減光では、波長の短い光がより多く吸収されることと 合致します。また、分光観測では、水素の幅の広い輝線が見られ、天体が爆発 的に膨張していることがわかりました。おそらく新星であろうと思われますが、 今後の追跡が重要です。 銀河系内の新星で、これほど暗い状態で発見されたのはたいへん異例です。 この種の天体がこれまで見逃されてきたのか、それともたいへんまれなものな のか、今後の研究課題となることでしょう。 参考文献:CBET 1512 (2008 Sept 24) 2008年9月26日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利で す。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。