Subject: vsolj-news 248: FU Ori stars in NGC 7000/IC 5070 VSOLJ ニュース (248) 北アメリカ星雲付近が騒がしい 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp 夏の大三角形を形づくる星のひとつ、はくちょう座α=デネブの東側には、 北アメリカ星雲NGC 7000と、ペリカン星雲IC 5070が広がっています。水素が 出す赤い光(Hα光)で輝いていて、名前の由来となったその形状から、天体写 真の好対象となっています。両星雲の間には、北アメリカ大陸の大西洋側の 形を際立たせる暗黒星雲があり、数多くの星が誕生する現場になっています。 この領域で、急激に明るくなっている星が、相次いで2個発見されました。 いずれも、星が誕生する過程で明るさを劇的に変化させている「オリオン座FU 型星」と分類されています。まさに、星が産声をあげているところと言えるで しょう。(以下、日付はいずれも世界時) 1つ目の星は、ブルガリアの天文学者たちが発見しました。水素輝線が特徴 的な天体として、HBC 722という符号が付けられていた星が、5月には17等ほど だったのに8月16日には14等ほどまで明るくなっていたのです。天体の位置は、 赤経 20時58分17.03秒 赤緯 +43度53分43.4秒 (2000年分点) です。静穏時には19等ほどで観測されており、およそ100倍に明るくなったこ とになります。 2つ目の星は、山形市の板垣公一(いたがき こういち)さんが発見しました。 札幌市の金田宏(かねだ ひろし)さんと共同で進めておられる彗星捜索の途上 でのことです。8月23日に、フィルターなしCCDで13.8等ほどで写っている新天 体に気付き、遡って調べたところ、昨年末には16.5等より暗かったものが、今 年2月20日には15.6等、4月3日には15.1等、6月2日には14.7等と、徐々に明る くなっていたことがわかりました。この天体の位置は、 赤経 20時51分26.19秒 赤緯 +44度05分23.6秒 (2000年分点) です。この位置を過去の可視光画像などで調べてみたところ、可視光や近赤外 線ではほとんど何も写っていませんでした。一方、1980年代に活躍した赤外線 天文衛星IRASや、現在活躍中の日本の赤外線天文衛星「あかり」による中間赤 外線観測では、かなり明るい点光源としてカタログされています。どうやら、 生まれつつある星に関係した現象のようです。 両天体とも、イタリアのアジアゴ天文台チームによって分光観測がなされ、 オリオン座FU型の変光星であると分類されました。明るさの変化はこれからも 続くものと思われ、今後も注目していきたい天体です。また、この領域は観賞 用などで多数撮影されていますので、そのような写真や画像をお持ちの方は、 今回の新変光星が写っていないかどうか、昔に遡ってチェックされてみるのも 一興でしょう。 参考文献:ATEL 2801 (2010 Aug. 17) ATEL 2808 (2010 Aug. 23) CBET 2426 (2010 Aug. 26) CBET 2428 (2010 Aug. 27) 2010年8月28日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利で す。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。