Subject: vsolj-news 259: New Variable Star in Pisces VSOLJ ニュース (259) 年末年始に新変光星の発見 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp 年末年始は全国的に荒天でしたが、天文愛好家の方々はそれを縫うように新 しい天体を捜索・確認しておられます。昨年末の12月29日夕方に、ベテランの 新星捜索者である静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんが発見された 新しい変光星では、その協力体制が大いに活躍しました。 西村さんは、29.40日(世界時、以下同様)に、デジタルカメラに200mm望遠レ ンズを用いて撮影した画像に、11.5等級の新星とおぼしき天体に気付きました。 遡って、25.39日に撮影した画像を点検してみたところ、同じ位置に13.7等の 星が写っていました。西村さんが測定した新天体の位置は、 赤経 23時04分25.83秒 赤緯 +6度25分45.8秒 (2000年分点) でした。うお座の西端部にあたります。 この連絡を受けた兵庫県洲本市の中野主一(なかのしゅいち)さんは、西村さ んの発見画像を再測定し、新天体の明るさを13.7等ほどと見積もりました。ま た、埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)さんは、31.37日に自ら撮影し た確認画像上で、この天体が13.8等であったことを報告しています。どうやら、 西村さんが報告された発見時の明るさは、少し明るすぎたようです。 新天体の位置を、昔の画像で調査してみると、かすかな光点が記録されてい ます。2005年に撮影されたスローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)では、この 星は21等級ほどで、かなり青い色をしていました。7等級ほどの増光というこ とで、古典新星と矮新星のいずれなのかに注目が集まりました。 年が明けて1月1.74日に、イタリアの研究者グループがこの天体の分光観測 を行ないました。新天体は、青い連続光に水素の吸収線が目立つという、降着 円盤が明るく輝いている状態を示しており、この天体は極大期の古典新星では なく、や座WZ型のような増光幅が大きい矮新星の増光であろうと考えられます。 今後の光度変化など、動向が楽しみです。 新天体は、単に発見されるだけでは価値が薄く、確認や調査によってその姿 が明らかになっていくことで、天文学への貢献となるものです。国内や国際的 な連携によって、発見された天体の素姓を解明することが重要です。 参考文献:CBET 2616 (2011 Jan. 1) CBET 2617 (2011 Jan. 2) 2011年1月2日 ※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利で す。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。