vsolj-news 264: Nova Sagittarii 2011 VSOLJニュース (264) いて座に今年初の銀河系内新星 著者:前原裕之(京都大学花山天文台) 連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp いて座やさそり座、へびつかい座などは私たちの銀河系の中心方向に見える 星座で、これまでに多数の新星が発見されています。毎年1月中旬〜下旬にか けて、夜明け前の東の空に夏の天の川が見えるようになると、新星発見のシー ズンが始まります。2011年最初の銀河系内新星がいて座の東に発見されました。 発見されたのは、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんで、これまで にも多数の新星を発見されているベテランの天体捜索者です。 西村さんは、1月25.86日(世界時)に200mmレンズとデジタルカメラで撮影した 画像から、11.2等の新天体を発見されました。また、西村さんは、この天体が 昨年撮影した画像には12.5等より暗く写っていなかったものの、今年1月17日と 24日に撮影した画像にはそれぞれ11.5等で写っていたことも報告されています。 この天体は清田さん(茨城県)、遊佐さん(宮城県)、門田さん(埼玉県)によって 存在が確認されました。遊佐さんは30cm望遠鏡によって撮影した画像から測定 したこの天体の位置を 赤経: 17時47分46.22秒 赤緯:-23度35分13.7秒 (2000年分点) と報告されています。 この天体の分光観測は、1月29日早朝に京都産業大学の神山(こうやま)天文台 の1.3m荒木望遠鏡と、岡山理科大学の28cm望遠鏡でそれぞれ行なわれました。 得られたスペクトルには水素のHαとHβ輝線、酸素の輝線がみられることから、 この天体は極大を過ぎた古典新星であることが判明しました。また、この天体 は赤い色をしていることが分光観測や測光観測から指摘されており、銀河系内 のガスやチリによる吸収を強く受けているものと思われます。今後の光度やス ペクトルの変化の様子が注目されます。 参考文献:CBET 2644 (2011 January 29) ・新星の画像 http://d.hatena.ne.jp/meineko/20110129#p1 (清田さん) http://space.geocities.jp/yusastar77/PNinSgr_110128.htm (遊佐さん) http://members.jcom.home.ne.jp/kenic-k/image/PNinSgr-20110127.jpg (門田さん) ・京都産業大学 神山天文台で観測された新星のスペクトル http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~kao/blog/index.php/view/38 ・岡山理科大学で観測された新星のスペクトル http://blog-imgs-32-origin.fc2.com/t/n/b/tnblab/PN_Sgr_sp20110128.png 2011年1月30日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。