Subject: vsolj-news 276: SN 2011ek and SN 2011em VSOLJニュース (276) 続々発見されるIa型超新星 著者:山岡 均(九大理) 連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp 8月3日付けのVSOLJニュース(274)で、暗めのIa型超新星2011ehについて紹介 しましたが、それからの1週間で、Ia型超新星がさらに2個、日本の天文愛好家 によって発見されました。2つの超新星は、距離は違うのに同じような明るさ で見えています。近いほうが、超新星2011ehと同様、Ia型超新星のなかでも暗 めのものだったからです。 1個目は、距離20Mpcほどという近傍の銀河NGC 918の近くに出現された超新 星2011ekです。この天体は、山形市の板垣公一さんが、8月4.77日(世界時、以 下同様)に撮影した画像に16.4等で発見しました。天体の位置は、 赤経 2時25分48.89秒 赤緯 +18度32分00.0秒 (2000年分点) で、渦巻銀河であるNGC 918の中心から西に27秒角西、北に133秒角にあたりま す。画像に写る腕よりもかなり外側です。同じ板垣さんの観測で、5.62日には 16.0等、6.642日には15.8等と順調に明るくなっており、また分光観測によっ て極大前のIa型超新星と判明しています。スペクトルの特徴も、現在の明るさ からも、この超新星は典型的なIa型超新星よりもかなり暗いものであると思わ れ、今後の追跡観測が楽しみです。 もうひとつの超新星2011emは、前記の超新星2011ekに比べると数倍遠くにあ るにもかかわらず、同じくらいの明るさで見えています。発見したのは、広島 市の坪井正紀さんで、超新星2011ehに引き続く発見になります。 坪井さんは、8月4.533日に撮影した画像で、16.8等で輝く新天体に気付きま した。天体の位置は、 赤経 13時27分13.19秒 赤緯 +55度29分17.4秒 (2000年分点) で、棒渦巻銀河NGC 5164の中心から東に11秒角、北に3秒角にあたります。坪 井さんの観測では、8.493日までの4日間で0.2等ほどの変動が報告されていま すが、ほぼ極大に近いものと思われ、分光観測でも極大期のIa型超新星と判明 しています。偶然とは言え、見かけの明るさは同じなのに、距離も正体も違う ものが相次いで発見されたことになります。 今回の発見では分光観測も発見後早期に行なわれました。特に、暗めの超新 星2011ekは、特異性と近距離であることから、くわしく調べられ、新しい知見 が大いに得られるものと期待されます。 参考文献 CBET 2783 (2011 Aug. 9) CBET 2785 (2011 Aug. 9) ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公 開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出 典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。