Subject: vsolj-news 279: Nova Scorpii 2011 No.2
 
                       VSOLJニュース (279)
                     さそり座に今年2個目の新星

                                   著者:前原裕之(京都大学花山天文台)
                                 連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp


 1年で最も暑い時期が過ぎ、夏の星座も夜の早い時間に西の空に移るように
なってきました。この夏にはさそり座デルタ星が1等級に増光して話題となり
ましたが(vsolj-news 273)、そのさそり座はこの時期には日本からは夕方に南
西の低い空に見えています。さそり座のアンタレスから南に15度ほど、日本の
本州付近からは南中時でもおよそ15度ほどの高度にしかならない場所に新星が
発見されました。発見したのは三重県亀山市の中村祐二(なかむらゆうじ)さん
と、オーストラリアのJohn Seachさんで、今年さそり座に発見された新星とし
ては、さそり座V1312(vsolj-news 271)に次いて2個目となります。

 Seachさんは6.37日(世界時、以下同様)に50mmレンズで撮影した画像から、中村
さんは9月6.431日に150mmレンズで撮影した画像から、それぞれ独立に9等台の新
天体を発見しました。この天体は茨城県の清田さんや千葉県の野口さん、筆者な
ど日本やオーストラリア、イタリアの観測者によって確認されました。この天体
の位置は

赤経  16時 36分 44.29秒
赤緯 -41度 32分 37.7 秒

です(E. Guidoさん他による観測)。

 この天体の分光観測は、京都産業大学神山天文台の口径 1.3m 荒木望遠鏡とチリ
のセロ・トロロ インターアメリカン天文台にある口径1.5m SMARTS望遠鏡で行なわ
れました。その結果、幅の広い水素のバルマー系列の輝線や、1階電離した(電子を
1つ失なった)鉄の輝線がみられることから、この天体が新星であることが判明しま
した。

 この新星の位置には15等ほどの天体が過去の写真に写っており、この天体が爆発
したものだとすると、増光幅は6等ほどしかありません。これは通常の古典新星とし
ては非常に小さく、反復新星(再発新星、回帰新星などとも呼ばれる)のへびつかい
座RS(vsolj-news 150)と同程度です。また、SMARTS望遠鏡の分光観測の結果からも、
スペクトルが反復新星の爆発初期のものと似ていると指摘されており、今後の光度
やスペクトルの観測に加えて、過去に撮影された写真や画像の調査も必要と言えます。

参考文献
 CBET 2813 (2011 September 10)

・清田さん撮影の新星の画像
http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PNV_J16364440-4132340-110907.jpg

・京都産業大学 神山天文台で観測されたスペクトル
http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~kao/blog/index.php/view/127

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