Subject: vsolj-news 284: Nova Ophiuchi 2012

                          VSOLJニュース (284)
                   西村さんがへびつかい座に新星を発見

                                     著者:前原裕之(京都大学花山天文台)
                                   連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp

 3月になると明け方にはもう夏の星座であるいて座やさそり座、へびつかい座と
いった、私たちの銀河系の中心方向に見える星座が南の空に見えるようになります。
そのへびつかい座の南、銀河中心方向から5度ほど離れたところに、12等の明るさ
の新星が発見されました。
 新星を発見したのは静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんで、3月25.789
日(世界時、日本時間では26日早朝)に、焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを
用いて撮影した画像から、12.1等の新天体を発見しました。西村さんは翌26.796日
に撮影した画像にもこの天体が写っていることを確認しました。また、高尾さん、
清田さん、遊佐さんらによってもこの天体の確認観測が報告されました。群馬県の
小嶋さんは、この天体が20.784日に撮影した画像には13等以下で写っていなかった
ものの、発見前日の24.785日に撮影した画像に12.2等で写っていたことを報告しま
した。新星はこの4日の間に増光を始めたと考えられます。

 この天体のスペクトルの観測は、3月27.74日に京都産業大学 神山天文台の口径
1.3m荒木望遠鏡を用いて新井さんと磯貝さんによって行なわれ、HαやHβ、1階電離
した鉄、中性酸素の輝線がみられたことから、この天体が古典新星であることが判明
しました。またHαや、鉄、酸素のスペクトル線の形状が、P Cyg型プロファイルと呼
ばれる、膨張するガスによる青方偏移した吸収線を伴なった輝線であることも報告さ
れました。岡山理科大学の今村さんによる分光観測でも、Hα輝線がみられたことが
報告されています。分光観測の結果によると、この新星は爆発によるガスの膨張速度
が遅い新星であると考えられ、今後の光度変化やスペクトルの変化が注目されます。



遊佐さんの観測によると、この天体の位置は

赤経:17時26分07.02秒
赤緯:-25度51分42.5秒 (2000.0年分点)

です。



参考文献:CBET 3072 (2012 March 28)
          CBAT "Transient Object Followup Reports" PNV J17260708-2551454

・新星の画像
 清田さん撮影
 http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PNV_J17260708-2551454-120327.jpg
 遊佐さん撮影
 http://space.geocities.jp/yusastar77/supernova/PNinOph_120327.htm

・新星のスペクトル
 京都産業大学 神山天文台
 http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~kao/blog/index.php/view/165
 岡山理科大学
 http://blog-imgs-32-origin.fc2.com/t/n/b/tnblab/pnv_inOph_20120327.png

                                                           2012年3月28日

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