Subject: vsolj-news 289: Nova Sagittarii 2012 No. 4

                        VSOLJニュース (289)
                 七夕の夜にいて座に明るい新星が出現

                                     著者:前原裕之(京都大学花山天文台)
                                   連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp

 私たちの銀河系の中心方向に近いいて座には、今年に入ってからだけでもすでに
3個の新星が発見されています。そのいて座の中に、今年4個目となる7等級の明る
い新星が発見されました。

 新星を発見したのはこれまでにも多数の新星を発見している福岡県久留米市の
西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)
さんのチームです。西山さんと椛島さんは、7月7.4986日(世界時、以下同様)に、
焦点距離105mmのレンズをつけたCCDカメラで撮影した画像から、7.8等級の新天体
を発見し、直後に口径40cmの望遠鏡を用いてこの天体を確認しました。この天体
は北海道の金田宏(かねだひろし)さんによって7.499日に7.8等、静岡県の西村栄
男(にしむらひでお)さんによって7.496日に8.9等、静岡県の金子静夫(かねこしず
お)さんによって7.520日に7.7等で、それぞれ独立に発見されました。金田さんの
観測によると、この天体は6月29日には8.6等以下であったことから、この1週間ほ
どの間に増光してきたと考えられます。西山さんと椛島さんの観測によるこの天体
の位置は

赤経:18時20分27.26秒
赤緯:-27度44分26.3秒      (2000.0年分点)

です。

 岡山県の藤井貢さんは7.629日にこの天体の分光観測を行ない、この天体のスペ
クトルに、水素のバルマー系列や一階電離した鉄の輝線の他、ナトリウム、酸素、
カルシウムの輝線がみられることを報告しました。Hα輝線の幅は秒速1500kmで、
これらの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。
 7等級の明るい新星なので、比較的小さな望遠鏡でも見ることができると思われ
ます。梅雨の時期で天体観測には少々困難が伴う季節ですが、今後の明るさの変
化などが注目されます。

参考文献
CBET 3166 (2012 July 7)

・新星のスペクトル(藤井さん)
http://otobs.org/FBO/novae/pnv_j18202726-2744263.htm

                                                            2012年7月8日

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