Subject: vsolj-news 291: Nova Monocerotis 2012
  
                        VSOLJニュース (291)
              藤川さんがいっかくじゅう座に新星を発見
 
                                     著者:前原裕之(京都大学花山天文台)
                                   連絡先:maehara@kwasan.kyoto-u.ac.jp


 暑い夏の季節ですが明け方には早くもオリオン座など、冬の星座が見えるよう
になってきました。そんな冬の星座のひとつであるいっかくじゅう座の中に、
9等台の新星が発見されました。

 新星を発見したのは、香川県の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんです。藤川さん
は、8月9.8048日と9.8061日(世界時、日本時間では10日未明)に焦点距離105mmのレ
ンズとCCDカメラを用いて撮影した2枚の画像から、9.4等の新天体を発見しました。
また、藤川さんは12日にもこの天体を焦点距離400mmのレンズを使って撮影し、そ
の存在を確認しました。この天体の追観測は、茨城県の清田さんらによって13日〜
15日に行なわれ、V等級では発見時とほぼ同じ明るさの9.7〜9.8等ほどであること
が報告されました。A. OksanenさんとC. Harlingtenさんの観測によると、この天
体の位置は

赤経: 06時 39分 38.57秒
赤緯:+05度 53分 53.0 秒    (2000.0年分点)

です。

 この天体の分光観測はフランスのC. BuilさんやJ. Edlinさん、岡山理科大学の
今村さんらによってそれぞれ行なわれました。この天体のスペクトルには水素の
バルマー系列や、中性ヘリウム等の輝線がみられたことから、古典新星であるこ
とが判明しました。今村さんは分光観測の結果からこの新星は最も明るい時期を
過ぎていることを指摘しました。この新星は、太陽に近くて観測が困難な時期に
新星爆発を起こし、極大時にはもっと明るかった可能性があります。また九州大
学の山岡さんによると、この天体の位置にはUSNOカタログに17.7等の天体がある
とのことで、もしこの天体が増光したとすると、少なくとも8.5等ほどの増光を示
したことになります。今後の明るさやスペクトルの変化、増光前の天体の正体な
どが注目されます。

参考文献
CBET 3202 (2012 August 17)

・新星の画像 (清田さんの観測)
http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PNV_J06393874+0553520.jpg

・新星のスペクトル (岡山理科大学 今村さんの観測)
http://tnblab.blog7.fc2.com/blog-entry-328.html

                                                           2012年8月18日

※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開
 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典
 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、
 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利
 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が
  subscribe vsolj-news
 と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。
 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。