Subject: vsolj-news 294: Nova Cephei 2013

                        VSOLJニュース (294)
                西山さん・椛島さんがケフェウス座に新星を発見

                                     著者:前原裕之(東京大学木曽観測所)
                                連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp

 天の川のほとりにあるケフェウス座は秋に見やすい星座で、2月には夕方に北西
の空に見ることができます。そのケフェウス座の中のカシオペヤ座との境界付近
に新星が発見されました。新星を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にし
やまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチーム
で、昨年10月のわし座新星(Nova Aquilae 2012; vsolj-news 292)の発見に次ぐ銀
河系内新星の発見です。

 西山さんと椛島さんは2月2.4119日(世界時)に、焦点距離105mmのレンズとCCDカ
メラを用いて撮影した画像から、10.3等の新天体を発見し、直後に口径40cmの望
遠鏡を用いて確認観測を行ないました。お二人の観測によるこの天体の位置は

赤経: 23時08分04.71秒
赤緯:+60°46分52.1秒    (2000.0年分点)

です。この天体は西山さんと椛島さんが1月23日と26日に撮影した画像には写って
いませんでしたが、1月28日には11.9等、30日には11.0等で写っていたことが報告
されました。また、筆者に行なっているサーベイでも1月30日にV等級で12等、31日
にV等級で11.3等ほどで写っていたことが分かりました。発見後の確認観測は、茨
城県の清田さんや山口県の吉本さんをはじめ、国内外の観測者によって行なわれ、
発見された天体が赤い色をしていることや、発見時からの明るさの変化があまりな
いことなどが分かりました。

 この天体の分光観測は岡山理科大学の今村さんと岡山県の藤井さんによって、2月
2日にそれぞれ行なわれました。この天体のスペクトルには、水素のバルマー系列や
1階電離した鉄などの輝線がみられたことから、この天体が古典新星であることが判
明しました。また、Hαなどの輝線ははくちょう座P型プロファイルを示すことも分
かり、輝線のピークと吸収線の底の波長の差から、新星爆発による物質の膨張速度
は秒速1000km程度であると報告されました。

 ケフェウス座に新星が発見されたのは、2001年に撮影された画像からMISAOプロジ
ェクトによって発見されたMisV1181=V709 Cep以来12年ぶり、分光観測で間違いなく
新星と確認された天体の発見としては、1971年に桑野さんによって発見されたIV Cep
以来42年ぶりです。この新星は、膨張速度が比較的遅いことから、ゆっくりと暗く
なるタイプの新星であると考えられます。しかし、このタイプの新星の中には、複
数回の増減光を繰り返したり、ダスト形成による急速な減光を示すものも知られて
おり、この新星の今後の光度変化などが注目されます。

参考文献
CBET 3397 (2013 February 3)

・新星の画像
清田さん撮影
http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/PN_J23080471+6046521.jpg
吉本さん撮影
http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/PNV%20J23080471+6046521.jpg

・新星のスペクトル
岡山理科大チームの観測
http://tnblab.blog7.fc2.com/blog-entry-361.html
藤井さんの観測
http://otobs.org/FBO/etc/pnv_cep_20130202.gif

                                                           2013年2月8日

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