vsolj-news 298: QZ Ser superoutburst VSOLJニュース No.298 へび座QZ、再増光を伴うスーパーアウトバーストを起こすことが判明 著者:大島誠人(京大理) Mail:ohshima@kusastro.kyoto-u.ac.jp 矮新星は、新星や超新星と比べて大きなニュースになることが少ない天体では ありますが、まだまだ謎に包まれており捜索家の方の手による新たな天体の発 見、あるいは既知の天体の増光の発見が研究の進歩に重要な手がかりとなりま す。 へび座QZは、1998年12月に愛知県の長谷田勝美さんが捜索フィルムの中に増光 しているところが写っているのを発見され、新変光星HadV04(長谷田氏の発見し た4番目の変光星という意味)として報告された天体です。おそらく矮新星だろ うと考えられましたが、その後静穏時の対応天体がどの星であるかよく分かって いない時期が続きました。2001年に分光観測が行われ、どの天体が増光中の星に 対応する天体かが判明するとともに、この天体が軌道周期120分の矮新星である ことが判明しました。また、一般的に矮新星は軌道周期から伴星のスペクトル型 がある程度推測できるという特徴がありますが、この系は軌道周期から推測され るよりはるかに高温の伴星を持っていることも判明しました。 軌道周期が120分ということから、この系は矮新星の中の「おおぐま座SU型矮 新星」に属することが予想されました。このタイプの矮新星は通常のアウトバー ストの他にスーパーアウトバーストと呼ばれる明るく長い増光を示すことがしら れており、極大が12等台と矮新星としては明るいということもあって多くのモニ ター観測がなされてきました。しかし、いくつかのノーマルアウトバーストが観 測されたもののスーパーアウトバーストは観測されることがありませんでした。 最初の発見から15年が経過した2013年3月11.028日、長らく待たれたスーパー アウトバーストをしているところがついに観測されました。発見は、ロシアで行 われているサーベイ観測プロジェクトであるMASTERによってなされ、報告された 光度は11.64等(CCDノーフィルター)でした。その後の観測によりスーパーハン プもとらえられ、この系がSU UMa型矮新星であることが改めて確かめられまし た。 スーパーアウトバーストはその後20日に渡って続いたあと一旦減光しました が、興味深いことにその後2回の再増光が観測されました。このような複数回の 再増光は軌道周期が非常に短い系では珍しくありませんが、QZ Serのように比較 的長い軌道周期の系では普通見られない現象です。このような現象が見られる理 由はまだ明らかになっていませんが、この系の伴星は軌道周期から推測される値 にくらべて低い質量を持つことも明らかにされており、特異な伴星を持っている ことがこの様な異例の現象と関係があるのかもしれません。 このような伴星を持つ系は矮新星が作られる過程の違いに関係があるのではな いかと言われており、今回のへび座QZのスーパーアウトバーストとそれに続く再 増光は矮新星の生成・進化の過程について知る上での重要な鍵となることでしょ う。 参考文献 Thorstensen et al. 2002 PASP,114,1117 vsnet-alert 15480 vsnet-obs 18439 長谷田勝美さん個人サイト日記 (http://khaseda.kir.jp/nissi1998-12.htm)