Subject: vsolj-news 299: Nova Scorpii 2013

                        VSOLJニュース (299)
                西山さん・椛島さんがさそり座に新星を発見

                                     著者:前原裕之(東京大学木曽観測所)
                                連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp

 6月上旬の午後9時ごろになると、晴れていれば、南東の低い空にさそり座の1等
星のアンタレスが赤く光っているのが見えます。そのさそり座の尾の部分にあた
る青白い星のシャウラ(Shaula = λ Sco)のすぐ北に新星が発見されました。新星
を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みや
き町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、今年2月にケフェウス座に出
現した新星(V809 Cep = Nova Cephei 2013; vsolj-news 294)に次ぐ発見になりま
す。

 西山さんと椛島さんは6月3.6146日(世界時)に、焦点距離105mmのレンズとCCDカ
メラを用いて撮影した2枚の画像から、11.1等の新天体をさそり座の中に発見しま
した。また、この直後の3.6728日には口径40cmの望遠鏡を用いて確認観測を行な
いました。お二人の観測によるこの天体の位置は

赤経: 17時33分59.43秒
赤緯:-36°06分21.6 秒    (2000.0年分点)

です。西山さんと椛島さんが5月17日と30日に撮影した画像には、この天体は13.4
等以下で写っていませんでした。

 この天体は、茨城県の清田さんが3.589日に撮影した画像と、福岡県の高尾さんが
3.628日に撮影した画像にも写っていることが報告されました。また、宮城県の遊佐
さんをはじめ、国内外の複数の観測者による確認観測では、この天体は非常に赤い
色をしていることが報告されました。フランスのC. Builさんは、6月3.960日にこの
天体の分光観測を行い、この天体が非常に赤い色をした天体であること、および強
いHα輝線を示すことを報告しました。これらの観測結果から、この天体は銀河面の
ガスやちり等の星間物質による影響で赤く見えている古典新星であると考えられま
す。

 分光観測の結果から、この天体は、新星爆発による物質の膨張速度が比較的遅く
(秒速1200km)、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。このタイ
プの新星の中には、ダスト形成による急速な減光を示すものが知られており、同じ
タイプの新星だった、西山さんと椛島さんによって2月に発見されたケフェウス座の
新星も、3月にダスト形成によると思われる減光が観測されました。今後の光度変化
の様子などが注目されます。

参考文献
CBET 3542 (2013 June 4)

・新星の画像
遊佐さん撮影
http://space.geocities.jp/yusastar77/supernova/PNinSco_130604.htm

・新星のスペクトル
C. Builさんの観測結果
http://tinyurl.com/lgc2r99

※Nova Cep 2013のダスト形成による減光の報告
Munari et al., ATel #4893
http://www.astronomerstelegram.org/?read=4893
Raj et al., ATel #5026
http://www.astronomerstelegram.org/?read=5026

                                                           2013年6月5日

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