VSOLJニュース(301) 増光のまれな矮新星、うしかい座UZのスーパーアウトバースト 著者:大島誠人(京大理) Mail:ohshima@kusastro.kyoto-u.ac.jp しばしば当欄でもアウトバーストが報じられるや座WZ型矮新星ですが、その多 くは新発見のものが占めています。これはや座WZ型矮新星のアウトバースト頻度 が非常に低いために、これまでアウトバーストどころか、存在自体をちゃんとと らえられていなかったものが多いためです。このような増光頻度の少なさもあっ て、や座WZ型矮新星で複数回のアウトバーストが観測されているものは数えるほ どしかありません。また、複数回のアウトバーストが知られていても、その多く が部分的な観測しかないなどのため十分なデータが得られておらず、全貌が明ら かでない、ということもしばしばあります。 うしかい座UZはや座WZ型矮新星の候補天体の中でももっとも歴史が長い天体の ひとつで、1940年代にはすでに存在が知られていました。もっとも当時は正体が わかっておらず、矮新星ではないかと言われるようになったのは1970年代になっ てからです。静穏時の光度がかなり暗いため静穏時の観測が困難なことに加え、 アウトバーストの頻度がまれで、特に矮新星だろうといわれてからしばらくの間 アウトバーストがとらえられない時期が続いたこともあって、矮新星をモニター する観測者から「幻の矮新星」「死ぬまでに一度は見たい矮新星」などと言われ ることもありました。その後、1994年7月と2003年12月にようやくスーパーアウ トバーストがとらえられ、SU UMa型矮新星であることが確認されました。また、 スーパーアウトバーストが終わった後で複数回の再増光をしめしたことなどか ら、や座WZ型矮新星であろうと考えられました。 この天体は矮新星の中では極大光度が明るい部類の天体で、スーパーアウト バースト時には11~12等程度まで明るくなります。しかし、1994年当時はまだSU UMa型矮新星についての研究が充分進んでいなかったこと、2003年のスーパーア ウトバーストは12月という非常に観測しづらい時期に起きたこと、などから、有 名で比較的明るい天体であるにもかかわらず充分なデータが得られていませんで した。また、1994年のひとつ前のアウトバーストは1978年にさかのぼるため、お そらく国内ではこのアウトバーストをとらえた観測者はいないものと思われま す。 前回の増光から10年、ついに次のスーパーアウトバーストを起こしました。発 見したのは、アメリカのC. Chiselbrook氏です。2013年7月26.08194日(世界 時)、うしかい座UZが12.8等(眼視等級)まで増光しているのを発見しました。 これを受けたカナダのW. MacDonald II氏がCCD観測を行ったところ、12.69等(V 等級)まで明るくなっていることが確認されました。その後この天体は少し増光 を続け、12.0等前後まで明るくなり、その後は穏やかに減光を続けています。正 確な位置は以下のとおりです。 赤経 14時44分01.2秒 (2000.0年分点) 赤緯 +22度00分54秒 (2000.0年分点) その後の連続測光観測によって早期スーパーハンプと思われる変動が受かり、 この天体がや座WZ型矮新星に属することが確実となりました。今後、数日のうち に通常のスーパーハンプが発展すると考えられます。近年の研究により通常の スーパーハンプと早期スーパーハンプの値を用いて矮新星の連星としてのパラ メータを調べることができるようになったことから、今後の観測によりこの天体 の素性が明らかにされていくことでしょう。 参考文献 vsolj-alert 16053, 16065 2013年7月31日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。