Subject: vsolj-news 302: Nova Delphini 2013 VSOLJニュース (302) 板垣さんがいるか座に明るい新星を発見 著者:前原裕之(東京大学木曽観測所) 連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp いるか座は夏の天の川のほとりに位置する比較的小さな星座ですが、1967年には 3等級まで増光した新星(今日ではHR Delとの変光星名がつけられています)が出 現したこともあります。そのいるか座の中に、6等級と双眼鏡でも簡単に見ること のできる明るさの新星が発見されました。発見したのはこれまでにも多数の超新星 や銀河系内の新星を発見されている、山形県の板垣公一(いたがきこういち)さん です。 板垣さんは8月14.5843日(世界時)に、口径18cmの望遠鏡とCCDカメラを用いて撮影 した画像から、6.8等の新天体を発見し、14.750日には口径60cmの望遠鏡でこの天体 を確認しました。前日までに撮影された画像には、この天体は13等以下で写ってい ないことも報告されました。板垣さんの観測によるこの天体の位置は 赤経:20時 23分 30.73秒 赤緯:+20度 46分 04.1秒 (2000.0年分点) です。 この天体は、ちょうど夜を迎えたヨーロッパの多数の観測者によってその存在が 確認されました。イタリアのG. Masiさんらのグループは、口径35cmの望遠鏡でこ の天体の分光観測を行ない、この天体が強いHα輝線を示すことを報告しました。 また、リヴァプール・ジョン・ムーアズ大学のグループが、ラ・パルマにある口径 2mの望遠鏡で行なった分光観測によると、この天体のスペクトルには、はくちょう 座P型プロファイルと呼ばれる、青側が吸収線、赤側が輝線となっている形状をし た、水素のバルマー線と1階電離した鉄輝線、および弱い中性ヘリウムの輝線がみ られることが分かり、この天体が爆発直後の古典新星であることが判明しました。 この天体はドイツのP. Schmeerさんによって双眼鏡を使った眼視観測で6.0等の 明るさで見えることが報告されました。まだ爆発直後と思われることから、日本 で観測できる時間帯には発見時よりもさらに増光している可能性もあります。 6等級と市街地でも小さな双眼鏡で十分見える明るい新星ですので、まだ新星を 見たことがない人には見るチャンスと言えます。また、デジタルカメラでも固定 撮影で容易に写すことができると思われます。今後の明るさや色の変化等に注目 してみて下さい。 参考文献 CBAT "Transient Object Followup Reports" (PNV J20233073+2046041) http://www.cbat.eps.harvard.edu/unconf/followups/J20233073+2046041.html ATEL #5279 "Spectroscopic Observation of PNV J20233073+2046041 with the Liverpool Telescope" Darnley et al. hhttp://www.astronomerstelegram.org/?read=5279 板垣さんによる新星の画像 http://www.k-itagaki.jp/images/pnv-del.jpg MASTERによる発見前の画像との比較 http://master.sai.msu.ru/static/OT/NovaDel2013-MASTER.jpg 2013年8月15日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。