Subject: vsolj-news 305: Nova Aquilae 2013 VSOLJニュース (305) 板垣さんがわし座に新星を発見 著者:前原裕之(東京大学木曽観測所) 連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp 今の時期の晴れた日の夕方、南西の空にひときわ明るく輝く「宵の明星」の金星 を目にすることができますが、その金星からさらに視線を天頂の方に移すと、ま だ夏の大三角が見えることに気がつくかと思います。夏の大三角を形作る星の1つ アルタイルを含むわし座に新星が発見されました。 山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんは、10月28.443日(世界時)に、口径 21cmの望遠鏡をCCDカメラを用いて撮影した画像から13.8等の新天体を発見し、 さらに28.457日に口径50cmの望遠鏡を用いてこの天体を確認しました。発見10日 前の10月18日に撮影した画像には、この天体の位置には14.3等よりも明るい天体 は存在していませんでした。板垣さんの観測によるこの天体の位置は 赤経:19時 02分 33.35秒 赤緯:+03度 15分 19.0秒 (2000.0年分点) です。 この天体は茨城県の清田誠一郎さんやイタリアのG. Masiさんらのグループ、 フィンランドのA. Oksanenさんによって、それぞれ確認観測が行なわれ、非常に 赤い色をしている天体であることがわかりました。 また、この天体の分光観測が、岡山県の藤井貢さんやオーストラリアのT. Bohlsen さんなどの他、広島大学のグループとパドヴァ天文台のグループによってそれぞ れ行なわれました。この天体のスペクトルには、非常に赤い連続光成分に、P Cyg 型プロファイルと呼ばれる、短波長側が吸収線になっているHαや中性酸素の輝線 の他、1階電離した鉄の輝線がみられることが分かりました。このようなスペクト ルの特徴から、この天体は明るさの極大の時期にあたる古典新星で、強い星間赤 化を受けていることが分かりました。 この天体は眼視等級に近いV等級では15等ほどと暗いため、眼視的に見ることは 困難と思われます。新星爆発によって膨張するガスの速度は秒速1000km程度と、 それほど速くはないことから、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えら れます。 参考文献 CBET 3691 "NOVA AQUILAE 2013 = PNV J19023335+0315190" (2013 November 7) ・発見画像(板垣さん撮影) http://www.k-itagaki.jp/images/aql-pnv.jpg ・新星のスペクトル(藤井さんの観測) http://otobs.org/FBO/fko/nova/pnvj19023335+0315190.png 2013年11月8日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。