Subject: vsolj-news 306: Nova Serpentis 2013

                        VSOLJニュース (306)
                   板垣さんがへび座に新星を発見

                                     著者:前原裕之(東京大学木曽観測所)
                                連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp

 日が暮れるのがだいぶ早くなり冬の季節が近づいてきましたが、星空に目を向け
ると、夕方の早い時間にはまだ夏の星座を西の空に見ることができます。へびつ
かい座で頭部と尾部に分断されているへび座は、今の時期には頭の部分は明け方
の東の空に、夏の天の川にかかっている尾の部分は夕方西の空に見えます。その
へび座の尾の近くの天の川に、新星が発見されました。発見したのは先月わし座
に新星を発見したばかりの板垣公一さんです。

 山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんは、11月23.384日(世界時)に、口径
21cmの望遠鏡をCCDカメラを用いて撮影した画像から12.3等の新天体を発見しま
した。さらに21cmの望遠鏡での発見後に、口径50cmの望遠鏡を用いてこの天体を
確認しました。11月6日に板垣さんが撮影した画像には、この天体の位置には15
等よりも明るい天体は写っていませんでした。板垣さんの観測によるこの天体の
位置は

赤経:18時 09分 03.46秒
赤緯:-11度 12分 34.5秒    (2000.0年分点)

です。

 この天体は群馬県の小嶋正さんが、11月22日と23日に150mmレンズとデジタルカ
メラを用いて撮影した画像には13等以下で写っていませんでしたが、26日に撮影
した画像には12.7等で写っていたことが報告されました。また、板垣さんが26日
に撮影した画像では、11.7等と、発見時よりも明るくなっていることが分かり、
23日の発見時点ではまだ増光中だったと考えられます。
 この天体は、広島大学のグループとイタリア パドヴァ天文台のグループによっ
てそれぞれ分光観測が行なわれ、水素のバルマー系列の輝線の他、中性酸素等の
輝線がみられることや、中性酸素の輝線にP Cyg型プロファイルと呼ばれる短波長
側が吸収線になっている特徴がみられることが分かり、この天体が古典新星であ
ることが判明しました。また、岡山県の藤井貢さんもこの天体の分光観測に成功
し、強いHα輝線と中性酸素の輝線がみられることを報告しました。
 分光観測から求められた、新星爆発によって膨張するガスの速度は秒速1000km程
度と、それほど速くはないことから、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると
考えられます。
 なお、この新星には「へび座V556」という変光星としての名前がつけられました。

参考文献
CBET 3724 "NOVA SERPENTIS 2013 = PNV J18090346-1112345" (2013 November 28)
IAUC 9264 "V556 Ser = N SER 2013 = PNV J18090346-1112345" (2013 November 27)

・新星の画像(板垣さん撮影)
発見
http://www.k-itagaki.jp/images/Ser.jpg
発見後の明るさの変化
http://www.k-itagaki.jp/images/ser-2.jpg

・新星のスペクトル(藤井さんの観測)
http://otobs.org/FBO/fko/nova/pnvj18090346-1112345_20131125.png

                                                           2013年11月29日

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