Subject: vsolj-news 309: Nova Sagittarii 2014 VSOLJニュース(309) 古山さんがいて座に新星を発見 著者:前原裕之(東京大学木曽観測所) 連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp いて座は私達の銀河系の中心方向にあたり、これまでに多数の新星が発見され ています。しかし、いて座の方向は12月から1月にかけて太陽に近く観測が難し いため、この時期に増光した新星は暗くなってから発見されたり、場合によって は見逃されてしまうこともあると考えられます。いて座は1月の終わりごろには 明け方の南東の空低くに見えるようになってますが、そんな明け方に見ええるよ うになったばかりのいて座に新星が発見されました。新星を発見したのは茨城県 の古山茂(ふるやましげる)さんです。 古山さんは焦点距離200mmのレンズとCCDカメラを用いて1月26.857日(世界時)に 撮影した画像から、8.7等の新天体を発見しました。新天体の位置は 赤経:18時25分08.60秒 赤緯:-22度36分02.4秒 (2000.0年分点) です。この天体は27.847日には千葉県の野口さん、28.876日には千葉県の清田さ ん、2月2.862日には埼玉県の門田さんによってそれぞれ確認観測が行なわれまし た。 この天体の分光観測は兵庫県立大学西はりま天文台の2mなゆた望遠鏡によって 1月30日に行なわれ、この天体のスペクトルには水素のHα、Hβ輝線の他、ナト リウムD線や一階電離した鉄、酸素の禁制線、中性酸素、一階電離したカルシウ ムの輝線がみられることが分かりました。また、Hα輝線や中性酸素の輝線には 青側が吸収線となる"P Cygプロファイル"がみられ、これらの特徴から発見され た天体が極大を過ぎた古典新星であることが分かりました。 vsolj-obsメーリングリストに報告された清田さんと広沢さんの観測によると、 この天体は1月28日には10.2等ほどでしたが、31日には11等、2月4日には11.6等 まで減光しました。分光観測によるとHαと中性酸素の輝線成分は青側と赤側に 2つのピークを示す構造をしていることが報告されており、今後明るさやスペク トルがどのような変化を示すのかが楽しみな天体と言えます。 参考文献 CBET 3802 "NOVA SAGITTARII 2014 = PNV J18250860-2236024" ・新星の画像 (野口さん撮影) http://park8.wakwak.com/~ngc/images/PNVinSgr.jpg (門田さん撮影) http://members.jcom.home.ne.jp/kenic-k/image/PNVinSgr-20140202.jpg 2014年2月10日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。