Subject: vsolj-news 310: Nova Cephei 2014 VSOLJニュース(310) 西山さんと椛島さんがケフェウス座に新星を発見 著者:前原裕之(東京大学木曽観測所) 連絡先:maehara@kiso.ioa.s.u-tokyo.ac.jp 3月になり少しずつ春が近づいているのを感じるようになってきました。明け方 にはもう夏の星座が東の空に見えるようになっています。はくちょう座の北東に あり、夏から秋にかけて見やすい星座のケフェウス座の中に新星が発見されまし た。新星を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと 佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、昨年2月にも同じ くケフェウス座の中に新星を発見しています。 西山さんと椛島さんは3月8.792日(世界時)に、焦点距離105mmのレンズとCCDカ メラを用いて撮影した画像から、11.7等の新天体を発見しました。さらに発見の 直後に口径40cmの望遠鏡でこの天体の確認観測を行ないました。この天体の位置 は 赤経: 20時54分23.86秒 赤緯:+60°17分07.7秒 (2000.0年分点) で、はくちょう座とケフェウス座の境界付近になります。この位置には西山さん と椛島さんが3月3日に撮影した画像には13.9等よりも明るい天体は写っていませ んでしたが、発見の前日の7日に撮影した画像にはこの天体が12.9等で写っている ことが分かりました。また、発見後に千葉県の清田さんやフィンランドのOksanen さん、ドイツのSchmeerさんらによって行なわれた確認観測によると、3月9日ごろ に11.5等ほどで最も明るくなった後、暗くなり始めたことが分かりました。 イタリアのパドヴァ天文台のグループや岡山県の藤井さんは、3月9-10日にこの 天体の分光観測を行ないました。観測の結果、この天体のスペクトルには水素の バルマー系列の輝線の他、一階電離した鉄の輝線等がみられることが分かりまし た。また、水素などの輝線は輝線の青側が吸収線になっているP Cygプロファイル と呼ばれる特徴を示し、この天体のスペクトルでは輝線のピーク波長から秒速 900kmほど青方偏移した波長に吸収線の構造がみられることも分かりました。これ らの特徴から、この天体が古典新星で、観測時点でちょうど爆発後最も明るい時 期にあたることが判明しました。 この新星は新星爆発による物質の膨張速度が遅いことから、比較的ゆっくりと暗 くなるタイプの新星であると考えられます。しかし、同様の「遅い新星」だった ケフェウス座新星2013( = V809 Cep)のようにダスト形成による減光を示すものも あり、今後の明るさやスペクトルの変化などが注目されます。 参考文献 CBET 3825 (2014 March 10) vsolj 12322 ・新星の画像 清田さん撮影 http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/TCP_J20542386+6017077.jpg ・新星のスペクトル 藤井さんの観測 http://otobs.org/FBO/etc/tcpj20542386_20140309.png 2014年3月11日 ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開 等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典 を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、 VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利 です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。 なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。