Subject: vsolj-news 313: New dwarf nova in Ophiuchus

VSOLJニュース (313)
3人の日本人により、へびつかい座にまた新たなや座WZ型矮新星を発見

           著者:大島誠人(京都大学)
          連絡先:ohshima@kusastro.kyoto-u.ac.jp

 ゴールデンウィークも終わり、日差しが次第に強まりつつある昨今ですが、日
本人の新天体捜索家の人々の手によってまた新たな矮新星が発見されました。
 発見したのは、これまでにも多くの新天体を発見していることで知られる静岡
県掛川市の西村栄男さん、群馬県嬬恋村の小嶋正、および茨城県水戸市の桜井幸
夫さん、の方々です。このような各地の捜索者の方が発見者として並ぶのは、こ
れらがいずれも独立発見だったことによります。
 まず西村さんは今年4月11.747日(世界時)に、200mm望遠レンズを取り付けて
撮像した画像からへびつかい座に10.7等級(ノンフィルター)の新天体を発見し
ました。この天体は、10.699日の時点で撮られた画像には写っていなかったとの
ことです。また、これとは独立に小嶋さんが4月11.757日にこの天体を発見し、
10.749日の時点では85mmの望遠レンズを用いて撮像した画像には写っていなかっ
たことを報告しました。さらに、桜井さんが180mmの望遠レンズを用いて11.780
日に10.6等の新天体としてこの天体を報告しました。こちらも10.792日に撮った
画像ではこの天体は写っていなかったとのことです。以上のような流れで、この
天体を3人が独立の捜索で発見したということになります。これを受けて、サー
ベイ観測を行っている東京大学木曽観測所の前原裕之さんはこの天体が4月
10.761日の時点では13.1等(V等級)より暗く、11.759日には10.9等(V等級)ま
で明るくなっていたと報告しました。正確な位置は以下のとおりです。

赤緯 17時14分42.55秒
赤経 -29度43分48.1秒 (2000.0年分点)

 その後、この発見位置の近くに紫外線衛星GALEXによって報告されている紫外
線の強いソースが見つかっていることが指摘されました。このような天体は矮新
星の可能性が示唆されます。さらに岡山県の藤井貢さんがこの天体の分光観測を
行ったところ、同じくこの天体が矮新星である可能性が強いという結果が得られ
ました。
 これを受けて、連続測光観測が行われ、早期スーパーハンプと思われる周期
0.05958日の変動が検出されました。さらに4月27日には早期スーパハンプから通
常のスーパーハンプが成長し始めるところが観測されました。
 その後、この天体は少しづつ減光しつつありますが、極大光度が10.7等という
のは矮新星としてはかなり明るい部類といえます。このように明るい矮新星がこ
れまで未発見だったのは、この天体のアウトバーストの頻度が非常に低いためだ
ろうと考えられます。早期スーパーハンプが2週間以上にわたって続いたことも
これを裏付けています。このような天体は連星の真価の観点から非常に興味をも
たれており、今後の研究が待たれます。
 今回の発見は興味深い矮新星の発見ということもさることながら、3人の日本
人の手による独立発見という点も注目されます。日本における新天体捜索の活発
さを裏付けるエピソードといえるのではないでしょうか。

参考文献
vsnet-alert 17207,17208,17211,17217, 17231,17250,17264,17271
http://www.cbat.eps.harvard.edu/unconf/followups/J17144255-2943481.html



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