梅雨の頃,たまに訪れた晴れた夜に天頂付近を見上げると,オレンジ色の0等星うしかい座 のアルクトゥルスと,そのすぐ近くで弧を描く かんむり座 が目につきます。
かんむり座 は明るい星座ではありませんが,2等星を中心に3等星〜5等星が取り巻いているので,自然と中央に宝石を輝かせた王冠の姿が浮かびます。
日本でも古来から親しまれ,車星,太鼓星,首飾り星,指環星などと呼ばれてきた星座です。
ギリシア神話では,かんむり座 は,豊穣とぶどう酒の神ディオニュソス(ローマ神話のバッコス)が,彼の妻となったクレタ島王女アリアドネに贈った冠だとされています。
その頃,クレタ島にはミノタウロスという半人半牛の怪物が住んでおり,クレタ島ミノス王の支配下にあったアテナイでは,毎年7人の少年少女をミノタウロスの生け贄に捧げなければなりませんでした。
ある年,アテナイの勇者テセウスはミノタウロスを退治しようと決心しますが,彼に恋したクレタ島王女アリアドネの助けによって見事に成功をおさめます。しかし,テセウスはアリアドネを連れてアテナイ帰る途中,立ち寄ったナクソス島にアリアドネを置き去りにして去ってしまいました。
ナクソス島を支配していたディオニュソスは,愛するテセウスに捨てられ悲しみに打ちひしがれているアリアドネを慰めて妃に迎え,七つの宝石をちりばめた王冠を贈ったのだということです。
その後アリアドネは幸せに暮らし,彼女が亡くなると,ディオニュソスは王冠を天に上げたのでした。
かんむり座 の星の名前については星のるつぼをご覧下さい。
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