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がか座 は,18世紀のフランスの天文学者ラカイユによって作られた南天の星座で,はと座 の南,りゅうこつ座 のカノープスのすぐ西に位置しています。
ラカイユは1751〜52年にかけて喜望峰で南天の星を観測し,主に当時の理化学器具や作図器具を象った14の新星座を設定しましたが,この星座と,ちょうこくぐ座 及びちょうこくしつ座 の3星座は美術家の道具となっており,フランスの古典彫刻や絵画が確立した時代を生きたラカイユが,祖国の芸術を記念したものであろうと考えられています。
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さて,学術用語としての星座名にはひらがなとカタカナのみを用いることになっているため非常にややこしいのですが,がか座 は学名の Pictorを直訳すると“画家座”となります。しかし,がか座 が空に描いている“がか”は,“画家”ではなく画家が絵を立てかけておくために用いる“画架”です。α・γ・βの3星で作る細長い三角形を三脚台=画架=イーゼルに見立てているのです。
もともとラカイユが残した星座絵には,三脚台とパレットが描かれていました。また,彼によってつけられたオリジナルのフランス名は,le Chevalet et la Palette(馬,つまり三脚台とパレット)です。
当初のラテン語名はこれを訳して Equuleus Pictoris(画家の馬=画架)とし,別名を Pluteum Pictoris(画家のパレット)していましたが,やがて“馬”や“パレット”の部分が省略され,今日では単に Pictor(画家)になってしまったというわけです。
なお,南半球で作られた星座であるため,星座絵は上下逆さまになっています。
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がか座 は南の空低いため,日本の大部分の地方ではほとんど認めることができません。 星図には南中時の東京の地平線を示しましたが,沖縄県の那覇市まで南下しても,南中時のα星の高度は地平線から1.8度です。『エール輝星カタログ3版』によるとα星の光度は3.26等。肉眼で見つけるには暗すぎます。一番北に位置するβ星の那覇市での南中高度は12.7度ですが,この星の同カタログ光度は3.84等,やはり双眼鏡の助けを必要としそうです。
けれど,がか座 には全天で2番目に明るい恒星カノープスという素晴らしい案内役がありますので,南天の暗い夜空でならば,探すのはそう難しいことではありません。カノープスの西,カノープスからほぼ同じくらいの距離にγとβが南北に並び,カノープスと三角形を描きます。α星は,南中したカノープスのほぼ真南に見つけることができます。
南の国で暗い夜空を見上げる機会がありましたら,どうぞ一度,フランスの古典絵画を記念するこの星座を探してみてください。
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星の名前については星のるつぼで解説していますが,がか座 には固有名がついた星はありません。