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たて座 は,いて座 の南斗六星の北に位置する小星座ですが,4等星と5等星ばかり。星を繋いで楯の形を想像するのは難しいかもしれません。
空が明るい都市部なら,肉眼で4等星や5等星を見つけるのは困難ですし,空が暗いところへ行くと,今度は天の川に埋もれて,星座を結ぶのが大変なくらい。
少しまどろっこしい探し方ですが,わし座 のアルタイル(七夕の彦星)から南西に延びる鷲の翼の星をたどり,その先端から弓なりに連なる星の先にたて座 のβ星があることを覚えておけば,比較的簡単にたて座 の位置を把握することができます。
たて座は,17世紀のドイツの天文学者ヘベリウスによって設定されましたが,星座絵を見ると,楯の中央に,大きく十字架が描かれています。
たて座は,星を繋いで作る星座というより,このあたりの特に濃くなった丸い形の銀河の雲を輝く楯に見立てた星座で,ヨーロッパの歴史の一コマを物語っています。
たて座は,もともと“ソビエスキーの楯座”と呼ばれており,1683年,当時ヨーロッパを脅かしていたイスラム教徒のオスマン・トルコ軍をウィーン郊外で打ち破ったポーランドの英雄ヤン・ソビエスキー(後のヤン3世国王)を讃えて作られた星座なのです。ソビエスキーの勝利は単なる勝利ではなく,イスラム教徒に対するキリスト教徒の勝利として,大変大きな意味を持っていたのでした。
その名残として,たて座 は今も十字架を携えています。