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くじら座 は,晩秋から初冬のにかけての宵に,南の空を覆っている大きな星座です。クジラといっても,ここに描かれているのは私たちがよく知っている海のクジラではなく,ギリシア神話に出てくる化けクジラ。
大きな星座なのに2等星と3等星が一つずつですから,星を結んで化けクジラの姿を想像するのは少々骨が折れるかもしれません。
くじら座 を探すときには,ペガススの四辺形の東の辺を使って,β星デネブカイトスを探すのがよいでしょう。デネブカイトスは2等星で,くじら座 の最輝星です。
デネブカイトスが見つかったら,視線を北東の方へ,そう,もし見えているのだったら,おうし座 のすばる(プレアデス星団)の方向へと移していきましょう。途中の一番明るい星が,くじら座 のα星メンカル(3等星)です。α星と,3.6等のγ星,4.1等のδ星が作る三角形は,このあたりで比較的よく目につく星列ですから,これらが見つかれば,自然とくじら座 の全体像へと繋げていけると思います。
もう一つ,くじら座 には知っておきたい星があります。くじらの首に位置するο(オミクロン)星ミラ,下の星図で,○印(黒抜きの白丸)となっている星です。
ミラは,1596年にファブリチウスというドイツ人神学者によって発見された最初の変光星で,約11ヶ月の周期で,2等星のデネブカイトスに負けないくらい明るくなったり,肉眼では見えないくらいに暗くなったり(9等〜10等くらい)します。その頃,こんな星は他に知られていませんでしたから,この星は“不思議=ミラクルな星”という意味で,ミラと呼ばれるようになったのです。
晩夏の深夜に見たくじら座 にはミラが光っていても,クリスマスの頃には見えなくなっていたり,逆に,秋口には見えていなかったミラが,クリスマスの頃にはベツレヘムの星のように明るく輝いていたりしますから,ぜひミラが見えるかどうか,気をつけてみてください。
ミラが見えるか見えないかは肉眼で見ただけで十分にわかりますが,変光星を観測してみたいという方は,変光星を見よう をごらんになって,どうぞ観測にも挑戦してみてください。
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ギリシア神話では,くじら座 は,エティオピアの海岸で,海神ポセイドンの怒りを鎮めるために生け贄となって鎖で繋がれたアンドロメダ姫へ襲いかかる化けくじら。
秋の夜空を彩る役者が勢揃いする古代エティオピア王家の物語は,是非とも知っておきたい星のギリシア神話です。
くじら座 の星の名前については星のるつぼをご覧下さい。